第26話 売却

<1854年12月15日>

【根本うい】

そうそう、私の携帯は充電切れだった。


携帯が売却に必要かどうかを検証できていなかったから、

携帯も一応用意しておかないといけなかったんだけど…。


そこでも頼れる真琴ちゃん!

『任務で持っていく予定だった物資の一部』といって、

充電器を出してくれた。

なんか、いろんなコネクタがあるけど、こんなの見たことないような…。

ま、とりあえず、私の携帯は満充電になってます!



「で、おふざけは置いといて話は戻るけど、

 携帯はつながるかな?」

年齢という不毛な議題から、真琴ちゃんが真面目な表情に戻る。


「私も電波はバリ3だけど…。」


「ま、掛けてみて。私の番号言うよ?

 090-××××-○○〇〇…」


かかった!


「しもしも~っ?」


「なにそれ、真琴ちゃん。

 もう流行んないよ?」


「いや、ネタでね…っと。

 まぁ、繋がるんだ…。

 とりあえず何かあった時のためにこの番号登録しておくから、

 ういちゃんも登録しておいて。」


「はぁ~いっ。」

携帯のアドレス帳に追加する。



「で、『売却』なんだけど、できそう?」


「『売却』は初めてなんだよ。

 そもそも『収納』ですら、ういちゃんに教えてもらうことがいっぱいだったのにさ…。」

そう、これまでは自分の残金だけでやりくりしてきたけど、

それだけでは『購入』が心もとないということで古本屋で本を買ってきた。


「まぁあれだけ忙しかったらねぇ…。で、売るのは?」

「まずは、『東海道中膝栗毛』の初版本。」

「あぁ、あれ!状態は悪いけど、『初版本』ってのは価値が付きそうだもんね!」

「そう、そう思ったの。とりあえずやってみるね。」

『初版本』ていうのは、いつの時代もプレミアがつくはず!


「じゃぁ、『売却』!

 …いち、じゅう、ひゃく、…って!

 じゅ、13万円…。」


「本当っ!?

 じゃ、じゃぁ、同じもう一セット、携帯使わないで『売却』できる??」


「う、うん。やってみる。『売却』っと。

 だいたい10万円になった…。」


「…。『売却』自体はできるのんだね…。

 金額に影響するのは順番?携帯?」

私ががぶつぶつと呟くと、次に試したいことが閃く。


「『おらが春』も2セットあったよね??

 今度は順番逆にして『売却』してみて」


「うん。『売却』、『売却』。

 …。

 携帯を使ったかどうかは関係なくって、後で売った方が安くなるみたい。」


「そっか…。希少価値が減るってことかな?」

また一つ新しいことが分かった。



「ねぇ、ういちゃんも試してみたら?」

真琴ちゃんからの突然の提案。


「私?残金は心もとないけど、アイコンがグレーアウトしちゃってるし…」


「検証のためだよ。

 ういちゃんも、『書物』を『売却』できるかもしれないんだよね?

 それに、多分携帯代だと思うけど、毎月引き落としもあるって言ってなかった?

 残金も使うだけだと減る一方だし…。」


「それはそうだよね。試してみようか。」

真琴ちゃんから自来也説話じらいやものがたりを2つ渡してもらう。

肩に手を当てて横から一緒に確認してくれる。


「まずはこれで選択して…、『売却』。」

 続いて、イメージで『売却』。」


「どう?」


「行けたっ!結構な高値!

 大発見だっ!」


真琴ちゃんが私の両手を取って喜んでくれるっ♪

こんなときには、女の子らしく甘味でも食べながらお祝いしたいけどっ…。


『ブゥーっ!』

私の携帯が鳴る?

片手を離して、真琴ちゃんと一緒にいぶかし気に携帯を覗く。


!!

グレーアウトしていた『購入』も復活してるっ!?

真琴ちゃんと顔を見合わせ、出てきた杏仁豆腐を『購入』…。

収納欄に『杏仁豆腐』が!


「『取出し』っ!」


…切り株の上に出てきた。

真琴ちゃんが恐る恐る手に取り、食べてみる。


「っ!杏仁豆腐!!」


つ、追加をっ!

買えない!?

携帯を見ると再びグレーアウトになってる。


「どうしたっ??」

真琴ちゃんが後ろから、私に頬を寄せて携帯を覗き込むと、

アイコンが復活する。


「『購入』っ!『取出し』っ!」


杏仁豆腐が購入でき、先ほどの切り株にもう一つ出てくる。


???


二人で顔を見合わせ、うんうんうなりながら状況を整理して、

色々と試していく。



【磯貝真琴】

使えないと思っていたはずの、ういちゃんの『売却』『購入』が使えた。


『柔道用品』しか購入できない私に比べ、

ういちゃんの『惣菜』の『購入』は震災に大いに役に立つはず。


出てきた杏仁豆腐を完食して、

二人で「あーでもない、こーでもない」と、議論・検証していく。


「『接触』…?

 私と手を握ったり、頬をつけたときだよね???

 それが鍵??」


「じゃ、じゃぁ、もう一度手をつないで!」


で、できた。


整理すると、

・販売も売却もできるのは『家』のみ。

・『売却できるもの』は他人でも売却できる。

それはわかったつもりだったが、『市場移動』がいまいちわからなかった。

そもそも『売却』欄にあったからわからなかった。


『市場移動』ってのは、「じゃなくても『購入』『売却』できる」ってことか!

どおりでがない私がいろんなところで『購入』できていたわけだ。

んで、その能力をういちゃんが使えたってことか!



二人で仮説を確認すると、できることを互いに提案していく。

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