第15話 お試し

<1854年11月4日>

【磯貝真琴】


[ステータス]

名前:磯貝真琴

年齢:16歳

収納:残7.11/32GB ??? ???

所有:V-22

ギフト:機体メンテナンス

購入可能:畳・道着

売却可能:(市場移動)

残金:7458万円

生命リンク:姪っ子



「よくわからないけど…、

 これをうまく使わないと地震の被害は防げないよね。

 って、16っ!?

 か、鏡はっ!」


鏡代わりに液晶パネル、操縦席のガラスで自分の顔を確認する。

「若返ってる…。

 目元の小じわも、

 この辺にでき始めてたシミも、

 艶がなくなってきて枝毛が目立つ髪も!

 全部なくなってるっ!!

 姪っ子ちゃん達とお買い物できるっ!」

いくら任務一筋で気が強めの姉御肌でも、

アラフォーの肌から上り調子の十代の肌に戻るのは、

抑えきれない喜びがある。



「そういえば、貯金はしてた方だけど、

 なんでこんなに残金があるの?

 …このお金取り出せないかな?

 『取出し』っ!」

スマホの時の様にはいかず、何も起きなかった。


「うん、できないみたいだね。

 まぁ、本当に江戸時代だっていうなら、

 現代のお金じゃ、どうせなにも買えないしね。

 とりあえず置いておこう。」

諦めてスマホの画面に戻る。



「『収納(ストレージ)』ね、っと。」

もう一つのアイコンをクリックする。

たくさんの名前が上がるが、気づくことがある。


「これは家にあったやつ…。

 出勤に使った車まで入ってる…。」

試しに神様が言った、姪っ子達のアルバムを『取出し』てみる。


「これは本物!

 ここに下の子が書いた落書きがあるってことは間違いない!

 これは大事にしておかないと…。

 ん?出せるってことは、収納もできる??」

アルバムを『収納』するよう念じてみる。


すると、取り出した時とは反対に、アルバムがスッと消えた。

「『収納』できたよね!?」

流れでやってしまい、ちゃんと収納できたか焦りながら携帯の一覧にあるのを確認し、もう一度取り出す。

「よかった…。

 検証は他の物でやろう。」


少し安堵して一息ついていると、あることが思い浮かぶ。

「どこで寝泊まりしようか…。

 そもそもここに機体を置いてたら、目立ってしょうがないよね。

 江戸時代にこんな目立つ鉄の塊、ないもんねぇ。

 ってか、飛行機も出来てないんじゃなかった?

 そのうち絶対誰かに見つかるよね。」


最悪自分は山でも生活できる。

そういう最低限の訓練はしてきたから。

とはいえ、こんな時代錯誤な物体をここに置いておいていいのか、

悩んでしまう。


飛行したとして、どこに着陸するのか?

こんな爆音をとどろかせて発見されないわけがない。

燃料だって補給できるかわからない。


それに、被災地支援の物資は、

現状、実質サバイバルをせざるを得ない自分としては、

持っていきたいところ。


「そうだ!持っていけばいいのか!」

そのためにある収納だ、と思いなおす。


「まずはサバイバルキット」

収納も、取出しも問題なし!

そういえばステータスに、『残●●』って項目があったはず。

あれが残容量だとするなら、どれだけ入れられるかの目安になる!

見てみると、数字に変動はない。

もう少し重いもので試してみよう。


「被災者の皆さん、ごめんなさいっ!

 物資、『収納』!」

パレットに乗った物資が収納される。

が、数値に変動はない。


「これなら!」

外に出て、機体に手を触れ、『収納』と念じる。


機体が消えた。

唖然として風景を見ていたが、慌ててスマホを確認する。

「収納できてる…。

 しかも、これでやっと0.01減ったってことは、

 どれだけ収納できるのよ…。」


まっさらになった野原の道の上で、

しばらくひきつった笑いを浮かべた後、

今晩のねぐらを探しに山へ分け入っていった。

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