第9話 努力・友情・勝利

『ははは、他愛ない。神の手先などこの程度のものよ』


 悪魔は高笑いしてから、つと上空に視線を向けた。


『見ているのだろう、神よ。お前の僕はこのザマだぞ』


 返事に答えるように、上空の雲がさっと割れ、神が姿を現した。


『……地上で好き勝手する悪魔よ。あなたの勝手も、そう長くは続きませんよ』

『どうだかな。我を止めたければ、せめてもっと強い手下を送り込め』


 勝ち誇る悪魔を見て、神は薄く微笑んだ。


『もう送っていますよ』


 次の瞬間、悪魔の足元で何かが動いた。空気に乗って小さな翼をはためかせ、悪魔の足元に向かって突進するのは──先ほど力尽きていたはずのブッコローだ。


 ブッコローの体は、神の一時的な加護によって黄金に輝いている。


『なに!?』


 悪魔は不意をつかれ、ブッコローの体当たりをもろにくらった。体勢を崩して転んだところに、ブッコローの嘴がさらに突き刺さる。


『なぜ……貴様、死んだはずでは……』


 もだえ苦しみながらもつぶやく悪魔に、神は涼やかに言った。


『さっきのは私がこぼした血の色インク(注9)。ブッコローには傷などなかったのです』


 ブッコローは神の意図を悟って、しばし死んだふりをした。そして悪魔が油断して視線を外した瞬間に襲いかかったのだ。


『こんな……こんなフクロウ一匹に……』


 か細い声をあげる悪魔から嘴を引き抜き、ブッコローはつぶやいた。


「ミミズクだ、馬鹿め」


 その言葉が終わると同時に、悪魔の断末魔の叫びがあがった。悪魔の体は塵と消え、競馬場を吹く風に乗ってどこかへ消えていく。後にはブッコローと、微笑む神だけが残った。


『よくやりました、ブッコロー。よくぞ○maazon(注10)を倒しましたね』

「勝手に名前をつけないでください」

『書き味最悪、インクが出てこない、ガラスじゃない、一文字しか書けないペンを広めようとするなど、万死に値します』

「そこまでひどかったっけ……」


 悪魔、死んでからいらない罪状を押しつけられている気がする。しかし神の機嫌を損ねたくなかったので、ブッコローは黙っていた。



(注9)ザキさんがオーダーメイドで作ってもらったインク。血天井がモデルらしいが、ちょっとブッコローが引いていた。なんで作ろうと思ったのか……。

(注10)某有名通販サイト。なんと一九九円のガラスペンが売られており、ブッコローが驚いていた。いつも温和なザキさんが、このガラスペンに対しては異常なまでに毒舌になったのが視聴者にも衝撃を与えた。この後に続く悪口は、全て実際の動画でザキさんが言っていた言葉。

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