第5話 思わぬ再会

 ブッコローはとりあえず家に戻ってみる。確かにゴッド・ザキの言う通り、家は誰もおらずがらんとしていた。一応生活に必要なものはあったが、一番の懸念が的中してしまった。


「金が……金がない……!」


 預金通帳もあるべき場所にないし、手持ちもガラスペンを買うには少ない。資金がないのは、これからの活動にとって致命的だった。


「稼ぐか」


 ブッコローは覚悟を固めた。伊達にギャンブラーとして生きてはいない、競馬で必ず金を稼いでやる。


 翌日、財布の中に光る一枚の万札を確認して、ブッコローは家を出た。


「あ、この前のフクロウさん」

「ミミズクです(注5)」


 ばったり会ったのは、この前ガラスペンを落としていた女子高生だ。この前より幾分早い時間なのに、どうしたのだろう。


「今日は早いですね」


 ブッコローが聞くと、彼女は頬を赤らめた。


「……実は、この前の彼と付き合う事になって」

「ほう」


 ブッコローは恋バナが大好物である。いささか交際が早すぎる気もするが、学生の甘酸っぱい話には大いに興味があった。


「今朝も会うんです。だから早めに出てきたの」

「青春だなあ」

「今日は持ってるガラスペンの見せ合いをするんですよ。ちょっと来ません?」


 ブッコローはちょっと考えた。すぐにでも競馬場に向かって移動したいところだが、こんな申し出はなかなかない。適当なガラスペンを買うより、推しの一本があったほうがゴッドの機嫌も良くなりそうだ。


「じゃあ、ちょっとだけ見せてもらってもいいかな」


 ということで、ブッコローは女子高生についていった。チェーン経営のカフェに入ると、彼氏がすでに席をとって待っている。



(注5)ブッコローは羽角(頭の上の耳のような出っ張り)があるのでミミズク。本物のミミズクが活動時間帯によって目の色が違うため、ブッコローもちゃんと左右の目の色が違う。が、この設定を知らない人が結構いるため、生配信をした時に「目どうした?」と心配される。

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