いじめと屋上

 いじめの理由はわからない。ただ、本人は否定していたが、いじめられているのは明らかだ。

「彩斗、本気で心配してるんだ。本当のことを言ってくれよ」

「わかったよ。俺はいじめられてる。でも助けることはできない。あんたに俺の気持ちか理解できるわけないから」

「思ってることを口に出してくれ。吐き出してくれ。僕は本気で助けたい」

「ならなんで気づかねぇんだよ、ここまで」

「本当にごめん。それでも助けたい」

「なんで助けたいんだよ」

「友達だから」

「友達なんて他にもいるだろ。なんで俺なんだよ」

「人間の友達で一番仲がいいからだよ」

「そんな言うんだったら助けてみろ。今度呼ばれたら一緒に来い」

「なんで呼ばれたら行くんだ?」

「行かなかったら、殺されかける」

「ひどっ。許せねぇ」

「本気で助けたいなら、本気でやれよ」

「分かってる。いじめを止める」

 彩斗が正直に言ってくれてよかった。何としてでもいじめを止めないと。僕が後悔しないように、絶対に救ってやる。

 それからは、いじめをどうやって止めるか考える日々が続いた。前より彩斗と一緒にいるようにしたら、いじめは減ったらしい。呼びだしは食らっていない。いじめは2人でやっているらしく、田中田上君たなかだかみぎみ木林森林きばやししんりんというらしい。

 結局いい方法は思いつかず、彩斗が呼び出されてしまった。

「ブッコロー、行くぞ。失敗すればお前もいじめられるようになるかもしれない。それでもいいのか?」

「いい。彩斗を救うためなら何でもやる」

「もうすぐ着くぞ。途中から入ってきて、止めろ。わかったな」

「了解」

 彩斗は屋上に上がっていった。

 数分後、屋上に僕も上がった。

「やめろよ」

「誰だあんた? なんか用?」

「やめろよ。彩斗がかわいそうだろ」

「そういうわけか。しょうがない、やめるよ。第3者に見られたらやめるよ。彩斗、今までごめんな」

「やめてくれるの?」

「やめる」

「ありがとう。二人とも」

「行くぞ、屋上に長居してらんねぇ」田中田がせかす。

 4人で校舎内に戻っていく。僕は安堵のため息をつく。教室に戻って彩斗に話しかける。

「彩斗、あのさ。ってあれ? 彩斗どこ行った?」

「どうしたのブッコロー?」

「ステイショー、彩斗見なかった?」

「いや、見てない」

「まじか」

「どうしたの?」

「言っていいかわかんねぇな。まあいいか。彩斗がいじめられていたからそれを止めた。んで帰ってきたらいない。そういう状況」

「いじめられてたの?」

「うん。止めたけど。どこ行ったんだ?」

 そのとき、隣のクラスから大声が聞こえた。

「おい皆、田中田のインスTA見ろ」

「何?」

 そこに表示されていたのは、衝撃的なものだった。

 ”いじめを止められたから、被害者を突き落とす。”

 彩斗の命が危ない。

「誰か警察に通報して! 僕は、彩斗を助ける!」

「ブッコロー、頑張れ」

「ありがとう、ステイショー」

 配信画面を見ると、彩斗が突き落とされそうになっていた。

『彩斗、さよなら』

 突き落とされた。

 僕はとっさに教室の窓から飛び出した。

 間に合え、彩斗のもとへ!

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