絶妙な空気とアプローチ

 朝、学校に行くとブッコローが先についていた。

「おはよう」

「おはよう、ブッコロー」

「期待してる?」

「うん」

 私たちの間には、絶妙な空気が続いた。この空気に耐えられなくなりそうなところで、ブッコローとよく話している、内藤彩斗ないとうさいとが教室に入ってきた。

「あれ?ブッコロー今日早くない? そのうえ、ブッコローが昨日話してたミミズクもいるし、二匹もしかして……」

「そういうことじゃないから。勘違いすんなよ、彩斗」

「まじか、残念」

「なんだよ、残念って」

「まあ、それはいいとして、なんでブッコロー今日そんなに早いの?」

「関係ねぇだろ」

「関係あるし。そんな反応するってことは、やっぱりなんかあるの?」

「だから違うって」

 二人のやり取りを見てると、さっきの絶妙な空気で話すのはよくないと思った。

「ブッコロー、この空気私無理だし、いったん昨日のことは忘れて普通に会話しよう。」

「そうだね。ごめん」

「ちょっと待って、昨日のことってどういうこと? あれ、やっぱ二匹って」

「ステイショー、無駄なこと言って。彩斗がそう思うと、勘違いされたままになって面倒だぞ。やってくれたな」

「ごめん。彩斗君、勘違いしないでよね」

「しないよ。じゃあ、ここにいてはいけないような気がするので、ちょっと出ますか。お幸せに」

「ステイショー……、余計なこと言いやがって」

「ごめんて」

 絶妙な空気が戻ってよかったと思って、会話を続けた。


 ***


 ステイショーによって彩斗に勘違いされていて、めんどくさくなっています。

「ブッコロー、詳しく教えてよ」

「彩斗、もうしつこいよ。教えないって。っていうか教えることないし」

「いいじゃん。なんでそんな嫌なの」

 こんな感じで一日中粘られてる。もういっそ言っちゃおうかとも思ってしまう。いや、言おう。諦めよう、もう。

「分かった。言うよ。昨日告白して、ちょっと気になってるから好きにしてみてって言われた」

「よかったやん」

「どうすれば好きになってくれると思う?」

「俺に聞いてもわからねえだろ。自分で考えろ」

「つめたっ」

「なんか言ったか?」

「いや。別に」

「やべっ、授業始まるぞ。早く教室戻んねぇと」

「本当だ。ありがと」

 授業中、僕はとりあえず優しくなればいいかと思い、誰かが消しゴムとかを落としたら、率先して拾うようにした。日常生活でもいろいろ優しくした。

 それでも何か決定的なものがないとだめなのかと勘づいた。何か起きないかなと思いながら、アプローチしながら生活していた。


 ***


 1ヶ月後、僕はものすごい光景を目にした。

 彩斗がいじめられていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る