有隣堂と二匹の距離
「ステイショー?」
「まさかこんなところで会えるとはね。びっくりしたわ」
「こっちこそ」
「ブッコロー君はいつも来てるの?」
「うん。ほとんど毎日」
「そうなんだ。今日はもう会えないと思ってた」
「ステイショーは、初めて?」
「うん。有隣堂は行ったことあったけど、ここは初めて」
「ここの有隣堂はいろいろあるから、いつも新しい発見ができるんだよね」
「そうなんだ。ここ確かに広いしね」
二匹で店内を回っていると、一人では出会えなかったような発見があって、とても楽しかった。やっぱり思う、僕はステイショーのことが好きだと。
***
2時間後、僕たちはずっと有隣堂で色々見て回っていた。時計を見てこんな時間かとなって、今から帰ろうというところだ。
「ステイショーって家どっちの方?」
「こっちの方だけど」
「本当? 僕もそっちだ」
「じゃあ、帰るか」
「うん」
僕が飛び立つと、彼女もついてくる。今日まさかこんなことになるとは、思ってもみなかった。
「ちょっとあそこの公園行ってみない?」
「いいけどなんで?」
「ちょっと言いたいことがあるから」
僕は今が絶好のチャンスだと思った。公園に着いたところで緊張がこみあげてくる。それでも自分はできると思って、勇気を出した。
「ステイショー、僕は君のことが好きです」
「えっ!」
「だから付き合ってくれませんか?」
「うーん、どうしようかな」
「お願いします」
「じゃあ、”私のことを好きにさせてよ”。ちょっとは気になってるから、その気持ちを大きくしてみてよ。私のことをどれだけ思ってくれてるか、それで判断する。だから、それまでは……友達、ね」
「分かった。絶対好きにさせて見せる」
「期待してるよ」
夕方の公園で思いをはせ、家に帰った。
夜、ベッドの上で考えていた。どうやって好きにさせるか。かっこいいところを見せる?それが一番いいと思うけど、ちょっとかっこいいところを見せても、変わらなそう。どうしよう。気になってると言ってはいたけど、その気持ちが冷める前に何か実行しないと。思ったより難題じゃねぇか。行けるだろと思った自分に嫌気がさす。同時に好きな子なんだから、そんなんでくじけちゃだめだと心に強く決めた。
***
私の名前はT.S.ステイショー。今日、帰りに仲良くなったばかりのブッコローに告白された。早すぎないかと思ったが、一人で過ごしていくのかと思っていた矢先に話しかけてくれて、やさしいなと思って、少し気になりかけていた。有隣堂で会ったときはびっくりしたが、そのあと告られたのもびっくりした。行動力凄いなと思った。優しさは伝わってきたけど、まだどれくらい優しいかはわからない。一目惚れして、話しかけてきただけかもしれないし。だから本当の性格を探ることにした。かっこいいところも見せてほしいし。自分でもあの答えはずるいと思うけど、あれが精いっぱいだ。明日ブッコローはどんなアプローチをしてくるか、楽しみだ。
瞳を閉じ、明日が来るのを待つ。おやすみ。
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