恋の予感とブッコロー

 クラスを確認したのち、教室に向かった。

 新学期のクラスは静かで、少し会話が聞こえるくらいだ。その中で僕はあるミミズクに目を奪われていた。

 これが一目惚れなのかと初めての感情に襲われた。今まで見たことないから、転校生なのだろうか。そう思っていると、先生が教室に入ってきた。

「こんにちは~。2年A組の担任になりました、重石来希おもいしらいきといいます。よろしく」

 担任はとても感じがよく、いい先生ぽかった。

 3時間後、一通り今日やることが終わった。

 今日はもう帰る時間になった。彼女に話しかけようと思ってもなかなかできず、チャンスを逃してしまった。まだ1日目だからまだチャンスはあると思うと、心が軽くなった。

 帰りはいつも通り、近くの有隣堂に寄った。いつも通り、面白そうな本を探していく。毎日下校時に来ているけど、新しい発見がたくさんあって、いつまでもいられそうになる。今日もまた、漫画で面白そうな作品を探す。結局見つけても金欠で買えないのが分かってても、いろいろ探してしまう。書店ってすごいよなと思う。

 今日はとりあえず帰ることにした。

「ただいま」

 家に着いた。ご飯を食べ、風呂に入り、ベッドの上で思いをはせる。明日も彼女と会えることに嬉しさを隠しきれない。明日こそ話してみようと心に決め、布団に入って目を閉じる。

「おやすみ」

 小声でつぶやいた。


 ***


 次の日、学級目標を決めることになった。

 複数人で集まって決めてもいいということだったから、みんな仲のいい人と一緒になって話し合っていた。昨年度同じクラスの人がいるからそれができるわけであって、いないと一人になる。彼女は転校してきた(と思われる)から、一人になっていた。これはチャンスなのではないかと思い、思い切って彼女に話しかけることにした。

「あの、君一人だよね」

「そうだけど……」

「じゃあ一緒に目標考えない?」

「いい、の?」

「うん。あ、名前言ってなかったね。僕はR.B.ブッコローっていうよ」

「私はT.S.ステイショーっていいます」

「よろしく。敬語じゃなくてタメ語でいいよ」

「よろしく。ありがと、じゃあ考えよっか」

「そうだね」

 心臓の音が相手に聞こえそうなほど、ドクドクしている。とても緊張したけど、勇気出してよかった。

「えっと、やっぱり目標って四字熟語がいいよね」

「私もそう思った。何がいいかな」

 2時間後。

「じゃあ、今日はこれで終わり。日直号令」

「気を付け、礼。さようなら」

 今日はもう会えなくなると思うと、少し悲しくなる。でも明日も会えると思うと、その気持ちはなくなった。

「あっ。ブッコロー君、ちょっと来てもらっていい?」

「分かりました」

 先生に呼ばれた。何の用だろう。

「今日、ステイショーさんと仲良くなってたよね」

「はい」

「ありがとう。転校してきた子だから、友達出来るか不安で見てたけど、はなしかけてくれてありがとう」

「どういたしまして」

「じゃあ、さよなら。ブッコロー君」

「さよなら」

 振り返ると教室にはもう誰もいなかった。

 今日も帰り道、有隣堂に寄った。今日はどんな発見があるかなと思っていたら、思いもよらぬ人がいた。

「ブッコロー君?」

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