【KAC20233】犯人は誰だ。

リュウ

第1話 【KAC20233】犯人は誰だ。

 ある家の前にパトカーが、数台停まっている。

 立ち入り禁止のテープが張られ、家の入口付近をブルーシートで覆われている。

 既に家の周りに野次馬や報道陣が集まってきていた。

 私は、非番だったが人が足りないと呼び出され、今、着いたばかりだった。

 私は、身分証明書を見せ、家の中に入って行った。

 和風建築の意外と古い家だ。

 奥に進み、書斎のような小さな部屋に警部が居た。

「遅れました」軽く頭を下げながら、しゃがんで被害者を見ている警部の横に同じようにしゃがんだ。

 そこには、人型がテープで枠どられた。

 右手を上に上げてうつ伏せで倒れているようだ。

「背中を刺されていた目立った外傷はなかった。ここに倒れていた。自称小説家、男性、四十前半、恨まれるような覚えはないと家族は、言っている」

 と、人型を見ながら、警部が呟きながら立ち上がった。

 そして、私に一枚のシワの入ったコピー用紙を手渡された。

 何ですか?と、警部の顔を見た。

「被害者は、これを握っていたらしい」

 周りの人が、集まってそのコピー用紙を私と一緒に見つめた。

「ダイイングメッセージですかね」

「ダイイングメッセージ?」

「被害者が死ぬ直前に書き残したメッセージですよ」

「小説とか、映画とか、漫画とかであるヤツか」

「なんて書いているんですかね」と私は用紙を見つめる。

「ん」と警部。

「ん」と鑑識。

「なんだぁ」と私。

「ぐちゃぐちゃで、読めんな」

「きたねぇ字?絵か?」

「普段から、キーボードばかり打っているからですかね」

 しばらく、私はその文字か絵かわからないモノを眺めていた。

「関係ないな」と、誰か呟くと注目していた人たちは、その場を離れた。

「迷宮入りかもしれないな」

「ダイイングメッセージがあるのに?」

「死ぬ時は、苦しくて、メッセージなんて考えてる暇なんかないよ」

「それもそうですね」

「ラーメンでも食って帰るか?」

 反対する者は、いなかった。

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