第4話
異世界で二人の魔女に出会った俺は、二人が住む家に泊めてもらうことになった。
家に着き、先ほどから気になっていたことを質問してみた。
マイトの「いじめられるとMPが回復するらしい」体質についてである。
基本、MPは睡眠などの休息でも自然回復するそうだが、
専用の薬など、特別なアイテムにより回復することも可能なのだそうだ。
そして、マイトの場合はその他にもいじめられることで回復するということらしい。何て体質だ。
彼女の師匠として昔から指導していたアリストさん曰く、
最初からマイトは優しく指導した時より、厳しく指導していた時の方が長く魔法を使えたらしい。
同じ魔法を使って同じだけMPを消費しているのに、何故厳しく指導した時の方が長く魔法が使えるのか。
アリストさんは疑問に思った。
そこで、魔法の指導以外にも普段から厳しく接する日を作ってみたという。
すると、やはりMPが回復したのか長く魔法を使えていたそうだ。
これにより、マイトをいじめることでMPが回復しているのではと考えたらしい。
アリストさんは自身にそういう能力があるのかと思ったが、今回自分以外(俺)がMP切れを起こしたマイトを叩いたことでもMPが回復したため、
これはマイトがそういう体質であると確信したのだそうだ。
「つまり、魔女だけにマゾ体質ということね」
「マゾじゃありません!!」
「・・・・。」
それが言いたかっただけだろ。
アリストさんは出会った時からずっとおっとりとした雰囲気で笑顔を浮かべている。
一方のマイトはほとんど怒鳴りっぱなしだ。
ところで、俺の中で1つ疑問が。
「ちなみになんですけど」
「何?」
「アリストさんは同じようにいじめられてMPが回復したりしないんですか?」
「そんな訳無いでしょう?この子と一緒にしないで」
「デ、デスヨネー…」
笑顔のまま凄まれた。
「すんません・・・・。ご家族ですし、何か同じ部分があるのかなぁと」
「えっ?家族って?」
「同じファーストネームなんで、そうなのかなと」
「あぁ成る程ね。いいえ、マイトとは血は繋がっていないの。この子の名前は私が付けたの」
「えっ」
どうやら、マイト・トレフェンは孤児だったらしい。
この名前はアリスト・トレフェンさんが引き取った際に自身が名付けたのだという。
ちなみに、この頃から既にマイトはちょっとした魔法が使えていたそうだ。
「じゃあマイトは昔からマゾ・・・・じゃなくて魔女の素質があったんですね」
「そうね。魔女の素質も、マゾの素質もあったと」
「だからマゾじゃありませんってば!!」
「それは置いといて」
「置いとかないでください・・・・」
「藤木君、もし良かったらマイトのパートナーを引き受けてくれないかしら?」
「はい?それってつまり」
「マイトをいじめてMPを回復する役を務めてほしいということ」
「そんなやつ要りません!!」
「マイトは黙ってなさい」
「「・・・・。」」
アリストさんは本当に普段からマイトに対して厳しいんだな。
つい俺も固まってしまった。
「俺は別に良いですけど、アリストさんがやるじゃダメなんですか?」
「もう飽きちゃったから」
「えぇ・・・・」
「それに藤木君はマイトをいじめるの、楽しかったでしょう?」
「それはもうはい」
「このクズめ・・・・」
ぼそっと呟くマイトの声が聞こえた。
カチンときたので。
「わかりましたやります」
「本当?良かった~」
「最っ低・・・・!!」
「それじゃあ、明日からもよろしくね。そうだ藤木君のお部屋を用意しないと」
「あぁ、どっかこの辺他に住める所あるんですかね?」
「無いわよ~。だから良かったら此処で生活してちょうだい?」
「いや師匠そもそもこんなやつ要りませんってば」
「いいからマイト、藤木君の部屋を用意しなさい」
「・・・・。」
「大丈夫、MPが足りなくなったら藤木君が持ってる鞭で回復してくれるから」
「いやそういう問題では・・・・」
魔法って部屋も作れるのか。便利だなぁ。
ともかく、俺の異世界生活の初日が終わった。
ライトノベル風物語1 @AlSKTm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ライトノベル風物語1の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます