すごいぞ選手権が動き出す?


その後、夏休み中にみんなと会うことは一度もなく始業式を迎えた。

二学期になってもユノは何も言わなかった。悲しんでいるというか怒っているような顔をしてイスに座っていた。

気まずくなって話しかけられなかったけど、ユノは私に何か言ってほしいことがあるみたいだ。

 

 あと、小説はしっかり夏休み中に書き終えて百目鬼クンに渡した。

ちなみに今日は昼帰りなのでセンパイとは会えなかった。

「それではさようなら」

 先生のさようならの挨拶を聞いた後、みんなの群れに交じって歩いて行った。

と、その瞬間。

「そこにいるのって野中か?」

「はい?ってセンパイ」

「おお、いたいた。昨日あいつの家行ったんだけどな」

「え?何の話ですか?」

「不登校の友達のことだよ」

 なんだ、そういうことか。急に話すから何のことかわからなかった。

「『なつふゆ大まつり』で最優秀賞取ったら来てやるって言ってたよ。あいつ、最初から祭りには来る予定だったみたいでな」

「なるほど」

「これは先に後野と阿須賀にも話しておいたからな」

「いつの間に!」

 センパイは仕事が早いな……

「で、これは聞き流してもいいんだがな……」

「何ですか?」

 どうせしょうもない話でしょ。

「お前も『すごいぞ選手権』に出ないか?」

「え?私が?」

「ああ。お前の小説は読んだことないけど、小学生で小説書いてるやつってなかなかいないからさ」

 確かに。

「開催日時は十二月二十八日だから、もし来るなら覚えておけよ」

「それくらい知ってますよ、祭りのチラシで見ました」

「そうか。ていうか邪魔しちゃったな!また今度!」

「また今度」


それから冬休みに入ったけど、その間にもやっぱり何も相談は来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る