第13話 『再会』 その13
そうして、初勤務日の、前日のこと。
あの方から、なんと、メールが来たのです。
一応、アドレスをお伝えしましたが、まず、相手のこともあるし、恐らく、来るとしても、いや、お返事は、来るとは確信していましたが、お手紙が来ると思っていましたし、ただ、おそらくは、1ヶ月以上かかるかも、とも。
それが、あの方の動きは、恐ろしく迅速だったのです。
まず、あの日、すぐに、電話番号を探しだし、ぼくたちが宴会をしている頃には、もう、連絡してくださっていたそうです。
おそらく、むかしの、お手紙なども、きちんと整理していらしたのでありましょう。
その先は、こうでした。
『大変、残念ではありましたが、あのご本人は、5年前に他界されたのだそうです。しかし、その娘さんというかたがみつかりまして、連絡を下さいました。またとても、とてもしっかりとした方で、なんと、むかしの思い出話しを憶えていらしたのですよ。それは、間違いなしに葵さんのことだそうです。葵さんの許婚の人は、悪い人ではなく、まあ、よいお家の次男さんですから、そのころは珍しい、大学まで行ったひとなのだそうですが、かなり葵さんを気に入っていたので、葵さんの自殺未遂と婚約解消はショックで、その後は働くこともせず、身体を壊して戦争にも行けずに、早くなくなったようです。長男さんは戦死し、結局おうちは、三男さんが継いだけれど、戦後、破産し、みなさん散り散りになったとか。この先は分からないとか。で、肝心の葵さんが好きだったという方ですよね。なんとびっくり、わかりました。戦死した、と、言われていましたが、それは、間違い、いやいや、どうやら嘘だったそうなのです。』
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