第12話 『再会』 その12
それから、ぼくたちは、自分の身の上や、ひでみこちゃんや、遠藤くんたちのことを話しました。ぼくのかつての自宅は、今は、土地を買ってくれた亡き父の友人のお家になっていますが、その路地を挟んだ向かいにあった、パーマ家さん(現在は、美容院とか、ビューティーサロンとか、申します。)のおばさんのことについては、さすがに、こちらのおばさまも、ご存じでした。そのおばさんから、向かいの家に、泣き虫の一人っ子がいて、これが、なかなかあ、たいへんで………と、いうようなお話を聴いた覚えがある、と、おっしゃいます。いやあ、それは、もう、ぼく以外にはあり得ません。泣き虫だけど、可愛い子だったらしいと、後から、付け加えて下さいました。
いつも、近所の女の子と遊んでいた、とも。
それこそが、ひでみこちゃんです。
ぼくは、実は、一番気になっていた、しんちゃんのことも、尋ねてみました。
しんちゃんは、まだ4つのころ、ある朝、ぼくと同じ幼稚園に行く前に、表通りの向こう側の、大好きなパン屋さんにパンを買いに行くところで、バックしてきたバスにひかれて、亡くなりました。
あの時のことは、ぼくの最後まで、きっと、忘れられません。
小さなお布団の上に寝かされて、包帯をぐるぐるまきにされて、お鼻だけでていた、しんちゃんの頭。
しんちゃんを乗せた自動車を、『しんちゃん!』、と叫びながら追いかけ、道路に倒れ込んでしまったお母さま。おなじ、しんちゃんの、ぼくの手をじっと握って『いつも、しんちゃんと遊んでくれてありがとう。』と、おっしゃった、お母さま。
お家は、たしか、『まるしん』、という、お店をしていました。
でも、その後の行方が分からないのです。
パーマ家のおばさんもそうでしたが、これについては、ひでみこちゃんにも、このおばさまにも、分かりませんでした。
たくさん、お話をしましたが、さすがにお疲れのようでしたし、なんとなく名残惜しかったですが、調べていただいたことの、連絡先をお伝えして、おいとましました。
その夜は、ひでみこちゃんと、遠藤くん、さらに、急遽かけつけてくれた、きいちゃん、ゆうこちゃんも加えて、近くの中華で、宴会になりました。
ぼくの、人生最後の、華やかなパーティーだったかもしれません。
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