第11話 『再会』 その11
『あの、その、許婚の方とか、好きだった方のことは、なにか、ご存じですか?』
と、ぼくは尋ねました。
そここそが、一番大切なポイントになりそうです。
『それがね、その、親に決められた人は、やはり、元々士族さんなんだけど、そのおうちは、その後断絶しているとは聞きましたが、お名前もわからないし、わたくしには、それ以上はよく、わかりません。まあ、親戚とか残っているかもしれませんね。しかるべき調べ方があるのかもしれませんが。でもね、好きだった人については、じつは、ちょっと心当たりがあります。』
『え、そうなんですかあ。』
ひでみこちゃんが、ちょっと身を乗り出しました。
『まあ、今どうかは、やってみないとわかりませんが、じつは、わたくしが迷子になったときに、母に渡してくださった方の娘さんが、橘さんちのちょっとだけ残っていた家業で、まあ、今で言うところの、パートのアルバイトをしていたのです。短期奉公とか本人は言ってましたが、その人とは、その後、裁縫とかの習い事にいったときに、そのころは、先生の見習いをしていて、仲良しの知り合いになりました。いくらか、年上なんですが、もしかしたら、そういう事情を知ってるかも、とは、思いながら、戦争になってから、彼女は、四国の実家に帰ってしまって。まあ、オリンピックくらいまでは、お手紙のやりとりもありましたが、そこからは、年賀状だけになり、最近は、ぷっつり。でも、すごく元気な人だから、健在かも。住所はわかるし、むかし、電話番号聞いてたかも。調べて、もしよかったら、連絡してみましょう。もし、生きていても、話ができるかわからないし、生きてても、お互いに、長くはないだろうし。』
『ぜひ、お願いできれば、幸いです。』
『はいはい。ところで、あなたがたのことですが。そもそも、お3人は、どういう、ご関係?』
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