第8話 『再会』 その8

 『いまなら、機嫌が良いから会ってくれるそうです。』


 と、遠藤くんから報告がありました。


 『ありがたい。行ってきます。場所は、どこですか?』


 と、ぼく。


 『大学の側だよ。いっしょに行こう。歩いて行けるよ。』


 『お店は?』


 『臨時時間休業。スマホ・メールは営業。』


 『はあー。』


 『面白そうだし、ここで降りられないわね。』


 ということで、3人揃って行くことにしてしまいました。


 『手土産がいるな。』


 『あの方は、お菓子が好きです。その甘いお菓子なら、当店にございます。箱詰めに、いたします。』


 『酒屋で、甘いお菓子ですか。』


 『いや、最近は、そうした需要が高いんだ。』


 大学の女子学生なども、お洒落なカクテルと、甘いお菓子のペアで買ってゆくらしいです。


 鵜の鳥が住んでいた森には、むかしから、小さな大学がありました。


 幼稚園もある。


 近くには、小学校も出来ている。


 今は、森の下には、高速道路が走り抜けているのです。


 周辺には、昔からの住宅もあります。


 過去と未来が共存しているような、不思議な場所になっていたのです。


 ぼくは、今は深く掘り下げた下側を高速道路が走っているあたりにあった広場で、子供会のキャンプに参加したことがあります。


 まだ、鬱蒼とした森が、かなりたくさん残っていました。


 記憶にあるのは、集まった人々より、その、夜の闇に高く聳える黒々とした森の木々のほうでありますが。


 おばあちゃんの家は、その昔の広場のあったはずのあたり、いまは、高速道路の脇で、大学の正門の割にすぐ側だったのです。



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