第7話 『再会』 その7


 『こんな住宅地図があった。』


 遠藤くんは、古い町内会の地図を持って帰ってきました。


 『えと、ほら、ここね。これが、ねんどやまがあったとこ。で、こっちに住宅があったわけ。この、名前がない四角のとこね。これが、幽霊屋敷。』


 『うーん。確かに。いまは、なんにもないか。あまり、覚えがないなあ。』


 ひでみこちゃんがうなりました。


 『みんな、マンションだな。線路がここだから、ここが境界なのは確かだね。』


 『うん。たしかに、電車走ってた。』


 と、ぼくです。


 とはいえ、ぼくが住んでいたその当時は、このあたりは、ディーゼル列車でした。急行ではなくて、準急なんて、微妙なのが走っていた時代です。いまで言えば、快速、といったあたりでしょうか。


 この地図は、それより、少しあとのものです。


 『誰か、よく知ってるひとが居ればいいな。』


 ひでみこちゃんです。


 『それは、いる。お客さんに、90歳になる元気なおばさんがいるんだ。杖もなしに、しゃきしゃきで、バスに乗って、駅の地下の蕎麦屋さんにいつも食べに行ってる。』


 『あ、ちょっと甘口の蕎麦屋さん。』


 『それだ。』


 『懐かしいなあ。しばらく行ってないな。』


 『後で、行きなさいよ。帰り道でしょ。』


 『うん。今夜は、近くに泊まるよ。久しぶりに故郷の夜さ。』


 『それは、いいわね。晩御飯いっしょにやろう。遠藤くんも。だれか、他に呼べるかな。』


 『やろう。やろう。その前に、おばさんを捕まえる。電話してみるよ。』


 遠藤くんは、スマホを取り出したのです。


 やはり、時代は変わったのだと思いました。



         📱


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る