第5話 『再会』 その5
ひでみこちゃんは、彼女の懐かしい自宅で、会ってくれることになりました。
まあ、同い年ですから、お互いに歳のことは、言いたくもないけれど、むかし、この部屋で、ひでみこちゃんと、その妹さん、それにぼくで、お人形遊びをしたことがありました。
そのとき、妹さんが持っていたお人形は、あとにも先にも、他で見たことがない、なんとも独特の姿をしたものでした。ずどんと、大砲の筒みたいな大きめなお人形で、わりと のっぺらなお顔でしたが、もしかしたら、服を着せて、中に手をいれて遊ぶようなものだったかもしれません。
ほんとに、久しぶりの再会でしたし、そうした思い出話は切りもなく、楽しいものですが、本題は、葵さんの正体についてです。
同じ町内会でも、この辺りのような都市中心に近いベッドタウン的な町では、なにか、自治会の役員でもしていない限り、あまり、周辺の人のことをすべて知ることはありません。
まして、となり町となると、さらに、分からないものです。
それも、半世紀は前の話ですから、なおさらです。
しかし、幸運と言いますか、ひでみこちゃんは、実は結婚後、しばらく、となり町に住んでいたのです。
かの、ねんどやま、については、ぼくたちの世代にとっては、もはや一種の伝説です。
ただし、遊び場としてで、そこにあった住宅は、伝説の範囲外かもしれないです。
でも、ずっと 地元に住んでいたひでみこちゃんでしたから、ぼくとは比較にならない情報を持っておりました。
『たしかに、あそこの丘には、住宅があったわね。知り合いの酒屋さんなら、昔の地図とか持ってるかもしれないな。配達したりしたかも。面白そうだから、付き合ってあげましょう。やましんくんも、同級生なんだけど、覚えてないかな。』
たしかに、その酒屋さんの名前に記憶はありません。まあ、当時、それは巨大な小学校で、1学年だけで、7クラスはあったので、無理もないのですが。最近は、新しい小学校もできたりして、かなり分割されているみたいです。
🍶
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