第2話 『再会』 その2


 もちろん、アルバイトであって、住み込みではないです。


 勤務は、週3回、1日4時間だけです。


 ただし、夜勤があります。


 これは、葵さんに合わせるためでもあります。


 葵さんは、昼でも夜でも、お構いなしに、病院と療養所の本館や庭に出現します。


 いつも、あの、はでな日傘を差して、古典的というか、ギャラントというか、ヒラヒラの沢山ついた、ドレス姿です。


 しかし、新しく建てられた 分館に出たという話しはありませんし、ぼくも、それは、見たことがありません。


 また、ぼくが、ちょっとだけ会話したのも、夜の時間帯でしたし、昔の看護師さんの残した記録でも、会話ができたのは、夜間だけだ。と、書かれているそうです。


 なので、必然的に、夜間勤務が必要になります。


 院長先生は、仮眠用の個室も、わざわざ、用意してくれました。 


 それは、以前にぼくが住んでいた部屋です。


 そこは、葵さんが良く出るという噂になっていて、今は、空き室のままなんだそうです。


 たしかに、葵さんは、たまに部屋を通過していましたが、話ができたのは、あの一回だけですし、特にぼくに問題は起こりませんでした。というか、もともと、問題があったから、療養していたわけで、変わりはなかったというべきでしょうか。


 でも、聞くところでは、その後、毎晩出るようになり、入室していた人が、耐えかねたようです。


 なんでも、覗き込んできたり、身体を押し付けて、金縛りにしにきたりしたらしいです。


 それは、恐いですよね。


 たしかに、一回だけ見た、葵さんのあの素顔は、忘れることができません。ただ、ぼくは、たぶん、葵さんに、好意を抱いていたのです。それは、説明不能なことですが、否定はできません。幽霊にみいられたとは、思いません。だって、無視されていたわけだから。まあ、それだから、院長先生の求めにも、応じたわけですからね。


 しかし、どうやら、あの時期の葵さんとは、様子が違うようです。


 なにが、葵さんに、おこっているのでしょうか。


        🍸


 


 


 


 


 

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