第10話 恐怖の象徴(特定の人にとって)

「おはよう」



・おは

・早起き出来て偉い

・今日も探索うおおお

・おはよー



夕飯を食べたあと、緊張などによる疲れからなのか、眠くなってしまったので探索は諦めて就寝した。寝ている姿も配信されてるのか?だとしたら少し嫌だな。恥ずい。


さて、今日は二層を目指してみようと思う。一層に出てくる魔物は多分スライムだけだ。スライム君は大して強くないし、EXPもGも少ないただの癒し枠だったな。


「よっしゃ、今日は二層を目指すぞ」


あー、地図とか欲しいな。ショップを見た限りだと白紙の地図とというのがあった。多分自分で描けってことなんだろうな。俺、地図とか絶対描けねぇよ。某世界樹だとほとんどオートマッピングに頼ってたからな。あれほんとに便利。


「二層は何処だー?」


適当にスライムを狩りながら歩く。地図なんて作ってないから勘に任せるしかないのが辛いところだな。視聴者達と雑談しながら歩いていると、なんと運良く上へ続く階段を見つけた。


「うお、まじかよ」



・二層への階段か

・なんか味気ない

・門番がいる訳でもないしな

・一層に門番がいても困るけどな

・一層でボスとかどんなクソゲーだよ



「ほんとだよ、一層でボスは勘弁してくれ」


そういうのは死にゲーにしか無いんだよ。ここは、ゲームオーバー=死ぞ?そう考えるとむしろずっとスライムでもいい気がしてきた。二層もスライムの楽園でありますように。


「お?」


階段を登っていくと、ゴツゴツした岩の壁が変わっていた。先程までの無機質な感じとは違い、苔が生えていてどこか歴史を感じる。


「失われた古代文明とかロマンだよな」



・それなあ

・分かる。家の庭でオーパーツとか探しちゃう

・それは普通にやばいやつ

・ご近所さんに通報されないようにな

・ええ……ハシゴ外さないでよォ



いやぁ、すごい神秘的な光景だ。日本にある洞窟もこんな神秘的だったりするんだろうか。やがて、光が見えてきた。陽の光のようにまぶしく、この先は塔の外につながっているんじゃないかと錯覚するほどだ。そんなわけがないのは知っている。


「おぉ……」


階段を登り切り、外に出た。そう、外だ。いや、外と見紛う光景といった方が正確か。一層が洞窟だったのに対して、二層は平原とでも言うべき場所だった。ひざ元まで伸びる草が生い茂り、この光景にそぐわない天まで伸びる大木が数本だけ堂々と立っている。


その圧倒的な光景に思わず声が漏れる。十七年生きてきてこんな絶景は見たことがない。そもそも、旅行とかあんま行ってないんだけどな。ただ、こんな景色が見られるんだと思うと旅も悪くない気がしてきたな。



・絶景やな

・サバンナみたいだ

・いや草原じゃね?

・てか木でかくね?

・でかあああい!



やっぱりあの木が気になるよな。こんな見晴らしのいい場所で、ここを探せと言わんばかりに目立っている。それに、一つ気がかりなことがある。


「こんな場所に緑のランプなんてあるのか?」


リシアが言っていた。緑に輝くランプがある場所はモンスターが寄ってこない安全地帯になっていると。そして、一階層につき、必ず一か所だけ存在すると。それが確かならこの階層にもそのランプがあるはずなんだが……燦燦さんさんと輝く太陽のせいでランプの光なんて分からない。……ん?


「太陽!?」



・太陽があるぅ!?

・なんで!?

・神の所業か!?

・当たり前すぎて全然気づかんかったわ



天を見上げるとそこには当たり前のようにまんまるなお日様が。ここって塔の中だよな?怪しくなってきたぞ。太陽があるってどういうことなんだよ。ますます黒幕の正体に謎が深まっていく。


とりあえず黒幕について分かっていることは

・異世界の人

・黒幕は複数人

・黒幕はステュワードやリシアの主たち

・創造の能力を持っている黒幕がいる

大体こんな感じだ。ほぼ何もわかってないな。


「ま、とりあえず探索のことだけ考えますか」


目下第一の目標はあの木を全部調べることと、この階層に生息しているモンスターを確認することか。スライムであってほしいんだが、この草の高さじゃあ違うモンスターだろうな。歩きづらかったら剣で切り払うことも考える必要があるな。


「お?」


そんなことを考えながら歩いていると、ひまわり畑のような場所に差し掛かった。黄色いし丈もひまわりに近いが、咲いている花は明らかに違う。めしべが出ている。あれだ、蜂とか蝶が吸いに来そうな形をしている。もしやここのモンスターは何かの虫か?それなら木があるのも納得だ。木に止まったり、巣を作る虫は多い。セミとかだったら最悪だな。


ま、モンスターを探すのは安全地帯を見つけてからだな。そう思い、別の方向に目を向けた時、それが目に入った。そして、俺は動けなくなった。一輪の花に止まり、優雅に蜜を吸っている。毒々しいというより、アメジストのように美しく、特徴的な模様を持つ紫色の羽。それを呼吸するように閉じたり開いたりしている。


「蝶……」


いたのは巨大な蝶。俺の上半身ぐらいの大きさがありそうだ。いくつか違う点はあるが、例の蝶に似ている。毒……持ってないといいな。



・あ

・みんなのトラウマだ

・ふつうに綺麗な蝶じゃね?

・にしてもでっか

・い、今なら気づかれてないし倒せるかも……

・奇襲し返すんだよぉ!



くそっ、ここで殺すべきなのか!?どうなんだ!?




_________


リシア「なんでただの蝶にあんなにビビって

るんですか?モンスターですらないですよあれ」

作者「ボウケンシャーみんなのトラウマなのさ……」

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