第7話 リシアのチュートリアル3

「さて、話すのは一つだけです。実はですね、この迷宮には一階層につき、一箇所だけモンスターが寄って来れない安全地帯があるのです!」


それは本当に重要なことじゃないか!安全地帯があるなら、常に気を張らなくて良くなる。更にはどうしようか迷っていた睡眠もそこで取れば良い。生き延びる確率はグッと上がるな!


「さて、その場所なんですが……第一階層のものは、ここからあまり離れてない場所にあります。とりあえず行ってみましょうか」


そう言うと、リシアはこちらに背を向けてさっさと歩き出してしまった。俺も慌ててリシアの背を追いかけた。


「なぁ、ここは安全地帯じゃないんだろ?モンスターが出たらどうするんだ?」

「どうするって、倒すのでしょう?中村様が」

「え、俺!?」

「そりゃそうでしょう。私が倒しても意味無いじゃないですか」


確かにそうではあるんだが、まだ心の準備が……いや、今するんだ。俺は生きてここを出るためならなんだってする。たとえ命を奪うことでも。


「お、モンスターですよ」


少し歩いたところで、リシアが急に止まり声を上げた。その言葉に驚き、リシアより前方に視線を向けると、確かにそれは居た。


「……え?」


のだが、少々拍子抜けだった。俺が想像してたモンスターってのはゴブリンとか狼だ。いや、こいつもモンスターとしてはド定番だし、一番有名なモンスターだとは思うんだが……正直に言えば、恐ろしさの欠片もなかった。だってそいつは……



・可愛い

・和むわあ

・この可愛いさは間違いなく悪いスライムじゃない

・ド定番の最弱モンスターきちゃ

・抱きついたら気持ちよさそうや

・スライム可愛い



愛くるしい丸いシルエット。目や口は無く、ただプルプルと動いている緑色の物体は、どう見てもスライムだった。


「一番弱いモンスターですね。再生能力もなく、体全体が脳のような働きをしているのでどこを傷つけても死にます」


弱点しかないのか。スライム君、少し同情するぞ。こんな儚い生き物が存在していることに驚きだよ。


「さ、やっちゃってください。最弱のモンスターと言えど、EXPとGは手に入りますからね」

「そんな……こんな儚いモンスター、倒せるわけが」

「ちなみにですが、毒を持ってますよ。まぁそれ」

「オラァァァァァ!!」


俺は全力で剣を振り下ろし、スライムを一刀両断した。

何が儚いだ!とんだ危険生物じゃねーか!危ねぇな、見た目に騙されるところだった。やはり毒持ちは先手必勝に限るな。


「えぇ……」



・リシアたん引いてて草

・そらさっきまで躊躇してたのに急に豹変したらびっくりするわw

・本性出たわね

・出たのは本性じゃなくてゲーム脳だろ

・最弱のモンスター言うとるのに、そんな強い毒持ってるわけないやろ



「スライムの毒は強くありません。ゲーム風に言ったら、1ターンにHPが2減るぐらいです」


ちなみにあなたのHPを千とした場合です。と、リシアが付け加える。いくらなんでも弱すぎないか?スライム君が可哀想に思えてきた。


「さて、モンスター初討伐おめでとうございます」


リシアが思い出したかのように、拍手をする。初討伐って言ってもなあ、なんか勢いで倒してしまったから、あまり実感は無い。一方的に殴り、一撃で終わってしまったため、戦ったという感じは無かったな。


「ステータスを開いてみて下さい。EXPとGが貯まってるはずですよ?スライムでは微々たる量かとは思いますけどね」


言われるがままに自分のステータスを見てみると、確かにEXPとGが2ずつ貯まっていた。スライムをあと48体倒せばレベルが上がるのか。道のりが長いな。まあ、あの弱さならこの量も仕方の無いことか。


ステータスを確認した後、再びリシアが歩き出したので、俺もそれに付いて行った。


そして、歩くこと数分。なんの変化もなかった景色が少し変わった。壁に点々と等間隔にランタンが灯されているのだ。それも緑色の炎で。


「さて、一層では最後のチュートリアルです。この緑色のランタンがある場所。ここは安全地帯です。モンスターはこれがある場所には決して寄って来れません。例え、獲物を追っている時でもです。安全地帯は一層ごとに一箇所だけですから注意してください」


なるほど。なら、休憩するなら必ずここを探す必要があるな。いかなる時もモンスターが入って来れないと言うのはかなり大きい。休憩地点としてだけでなく、逃げ場としても使えるわけだ。


「では、私によるチュートリアルはここまでとなります!最後に質問コーナー行ってみましょう!」


質問コーナー?

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