2024/5/28 幽霊の夢

 引っ越しの多い男がよりを戻そうとしつこく復縁を迫ってくるところから始まる夢だった。


 迫られている人はいつの間にか連れ出されて見知らぬ地から何度も帰ってきていて、仕事を何度もクビになっていた。何日も連絡がとれなかった上に無断欠勤したためだった。


 また連れ出された……せっかくいい仕事見つけて仲良くなってもらえてたのに……。


 そんなことを考えながら、内心ではなにしに来たの? っていわれないか不安になりながら、職場に顔を出していた。




 場面が急に変わり、とても美人でおっとりしてそうな人が、ヤクザのボスに気に入られてとても大切にされていた。


 それが気にくわないのか、性別関係なしに周りの人からいじめを受けていた。


 メガネかけた年老いている男の人からはかつてボスが殺した女の死ぬ前に録音されたらしき音を何度も聞かされ、女の人からは罵詈雑言に加えて足を噛まれるなんてことがたくさんあった。


 物凄く痛そうにしていて、立ち上がれず床を這って動くしか出来ないくらい酷い噛み傷ができていた。


 あるときヤクザのボスがその子に会いに来たけれど、様子がおかしいことに気がついた。


「このまま泣いてるばかりじゃあかへんの、わかっとるよな?」


 ボスなりの優しい声音と言い方で女の子を元気づけ、女の子は泣きながら頷いて傷が痛むのを耐えながら立ち上がってあるいていた。


 痛そうにしながらも一生懸命歩いている姿はとても健気で綺麗だった。


 ボスがそうやって元気づけている間も女の人はその子の足を噛んでいたけれど、立ち上がってからは舌打ちをしてつまらなさそうだった。


 ボスの鼓舞で病院へいった女の子は、どういうわけか車の中に監禁されていた。


 おっとりして可愛かったその子の表情は左目だけ目付きが変わっていて、駐車場にとまっている車の中で何やら叫んでいた。


 あなたたちこのままじゃなんとかかんとか。


 運転席に男の人がいて、その人の声は優しくて落ち着ける声だった。


 車の窓には黒いカーテンで外が見えないようにしてあり、女の子はそれでも酷く怯えていた。


 男の人は女の子にいくつか質問をしていた。


「君は自転車に乗っててもつけられていると感じるの? 乗っているときはなにもなかったんでしょ?」


 女の子はそれを聞いて酷く悲しそうな顔をしていた。


 言っても信じてもらえないと感じているときの顔だと、見ている私にはわかった。


 それでも、男の人の質問に女の子が正直に答えていると、車の外にいると言い始めた。


 男の人は緊張した様子で色を聞いていた。


「色は?」


 女の子は「青……」と答え、それを聞いた男の人は困ったなといいながら車を出した。




 視点が男の人になり、なれた手さばきで車を運転してどこかへいこうとしているのを見ていると目が覚めた。




 目が覚めると、見ているだけだったその夢の色々な情報が頭に流れ込んできて涙が流れてきた。


 その子は幽霊が見えて接触まで出来る子で、言い寄られていた夢からずっと同じ子のことを見ていたらしい。


 言い寄ってきていたのはその子の亡くなった元カレで、寝ている間に連れ去られていたようだ。


 ヤクザのボスはその子の特異性に気づいて保護し、大切に守ろうとしていたけれど、女の子の話を聞いていると、その子が聞いていた音はかつてボスが殺した女の叫び声で、男の特徴はボスが殺した男のものと同じだった。


 ボスが過去に殺した男と女がその子に嫌がらせをしていてかえって傷つけてしまっていたことに気がついたようだ。


 周りに誰もいないのに勝手に足に噛みあとができたり、なにも聞こえてこないのに女の子が過去にあったことを繰り返し聞いて怯えていてボスも辛そうにしていた。表には出さなかったようだけれど。


 表面上では精神障害というレッテルを貼りつつも、信頼できる上に同じことの出来る男に大金を積んで預けたようだ。


 それが車の運転をしていたあの人。


 幽霊に連れ去られることもあるから、幽霊が来ても逃げられるよう車のなかで暮らすしかなくなったようだった。


 女の子に自覚はなく、生きている人との判別もつかず、とても危うい状態だったらしい。


 それでも、ボスの言葉で一生懸命立ち上がったことをボスからとても評価されていた。


 そのうち自分一人の力でなんとかできるようにしてやってほしいという願いを男の人は託されたようだった。




 目が覚めてから涙が溢れてとまらなかった。


 怖くて泣いているのか、人に恵まれたその子への涙なのか、理由はわからない。


 目が覚めてから夢うつつな状態で目を閉じていると、私も幽霊がちょっと怖いから目を開けられなかったのはあるけど、ただ怖くて泣いたわけではないのは確かだった。


 あのあとその子がどうなったかまで見てみたかったな。

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