第3話

どう考えても頭のおかしい夢から覚めて会議室から外を覗くと、夕方になってしまっていた。

これは引きこもりに近い生活をしていた時と同じ感覚になってくる。


「何だこの紙」


目の前に置き手紙のような物があり、半分に折られているので中は分からないが、一つ言えるのが何で企画書のコピーを裏紙にしているんだ?マーカーでバッテンしたから裏紙にして良い訳ないだろう。

さっさとシュレッダーに掛けて闇に葬って欲しいのだが、この会社の人達だしな。

漏洩しなきゃいいだろと思ってそうではある。


さてとりあえずぐちぐち考えてないで開けてみるか。


『新人Vtuberの担当は独断と偏見でマサさんに決定しました by梓』


何か勝手に新人Vtuberの担当にされたんだけど、明らかにおかしくない?

担当とか教育係をVtuberにやらせるのか。

てか独断と偏見の所は絶対に暇そうだからと言う理由だろ。

とりあえず一発殴りたいな。


「もう嫌になってきたんだがこの事務所」


まともな事務所じゃないよなここ。

まぁVtuberの事務所って何処も頭ひとつ抜けてることが多いから何とも言わんけど。

よくよく考えたらどの業界も事務所が全体的におかしいんだな。


ここに居てもしょうがないし家にでも帰ろうかな、ついでに何か食べ物を買って帰るか。


結局この後は家に帰る途中にスガキヤに寄って帰ってきた。

めんどくさくなってラーメンだけ食べて帰ってきたのだが、この生活が完全にニートの生活になってる。


「配信するか?いやでもめんどくさいしな」


自宅に戻ってもここには俺以外誰も居ない。

両親は住んでいるのが違う県なので、俺は一人暮らしをしている。

Vtuberで稼いだお金で家賃とかを払っているので両親には何も言われない。

そうなると必然的に自堕落な生活になってくる。それでも最低限生活できるようにしているので問題はないだろう。


そんな事を考えながらソファに座ってLINEを見てみる。

2日ぶりに開くと思ったよりも来ていた。

これ返した方が良いのか?

何故か赤羽からも来ているし、絶対変な事だろうとLINEを見てみたら。

『マサさん明後日仕事で京都に行くことになったから準備して』と来ている。

危ない見ていなかったらドタキャンしていた所だった。

てか何で京都?仕事の内容も教えて貰ってないのだが、大丈夫なのだろうか?

まぁ赤羽がこう言う事で失敗した事は今までの経験上無いので多分大丈夫な事だと思う。

そう信じたい。



そしてLINEを見てから数時間が経ったのだが、やる事が一切ない。

暇すぎてショート動画を作り始めてしまっている。

この家にはテレビもねぇラジオもねぇと言う吉幾三の田舎みたいなことになってしまっている。

テレビが無いのにNHKが数回来たことがあるんだよな。撃退シールでも貼るか?最近ふざけてしていたうちの会社の社長の写真付きで。

ある意味効果あると思うんだよな、宗教勧誘とか訪問販売の撃退もできそう。


「うん?準備してってきてるって事は、まさかの泊まり?」


泊まりならちょっとめんどくさいな。

赤羽にLINE送るとすぐさま返信が来た。

あの子ずっとスマホを使ってるのか?

それはそれで心配だな。一応同い年なはずなんだけどね。


『一泊2日で宿は会社が取ってくれた』


とりあえず一泊か。なら何とかなりそうだな。極論お金さえあれば向こうで服買えるし足りない物はヨドバシとかで何とかなる。


なら準備して風呂入って編集でもして寝るか。1日の半分ぐらいは寝てそうな感じだが、まぁVtuberってそんなもんでしょ。

やる気が無きゃやらなくても良いが、その分お金を稼げないだけだし、努力しなくても良いけどそれが自分に返ってくるんだよな。




翌日、俺は残念ながらまた会社に来させられている。今日はオフィス内に配信スペースを新設するから手伝いに来て&アドバイスが欲しいらしい。

一つ言えるのはとりあえず全てゲーミングにするのはやめて欲しい。

また技術部が暴走したのかは定かでは無いが、表札を七色に光るようにするのはやめろ。

それと何で朝から呼ばれるん?昼ぐらいにして欲しい


「まさちゃんこの部屋どうかい?」


「パソコンもちゃんとしたやつで、いいと思いますけど、配信するならキャプチャーボードが欲しいですね」


「他に必要なものはあるかい?」


「Switchを充電しながら出来るように、延長コードがあった方が便利だと思うかな」


「どちらも買いに行かなきゃないね」


「何ならマイクとかも良いやつですけど、良くそこまで予算ありましたね」


「いくら使っても良いよと、上から言われたから良い物を買ってきたよ。なんか問題あったかい?」


「最悪、使いやすければ何でも良い気がするけどね」


経費で落ちるのは良いけど、この部屋を作るときに買い物しに行ったのは、雅美って事で良いのかな?

地味にモニターも2枚あるし、パソコンも20万円台ぐらいのやつだし、誰でも使えるようにするには十分な気がする。

もっといい物はそもそも自分で買いましょうって思うし、新人の子がお金無くて機材買えないならここを使ってお金貯めれば良いし、何で俺らの時にこんな施設が無かったんだろ。


「もう買いに行くのめんどくさいからAmazonで注文するけど良いと思うかい?」


「Amazonでも良いと思うよ。大須まで行くのめんどくさいし」


「後は何か何か無いかい?」


「ならとりあえず外の表札を剥がさない?あの光ってるやつ」


「あれは技術部が2日かけて作ってくれたやつだよ」


「暇なん?技術部。修理班的な事してたんじゃ無かったのか」


「社長がやばいから仕方ないよ」


「それは結構前から頭おかしいから」


「他の人もついでに呼んでこようかい?」


「確かに誰かしらVtuberいるでしょう」


「ちょっと拉致ってくるよ」


そう言い雅美は走って行った。

今思ったけど何でこの部屋の前は経理部なんだ?久しぶりに経理部に来たけど相変わらず死んだ目をしてる人が多いですね。

ついでに変なポスターと垂れ幕があるのもいつも通り、てかさここの経理部ってガバガバガバナンスだけど大丈夫なのかな?

税務署から本当に何か言われそうで怖いが俺は経理部じゃ無いし良いか。


「まさちゃんこの人を連れてきたよ」


「そうなんだ、とりあえずこの人は誰?」


Vtuberなんて素顔を出さないから会った事ない人が大勢居るなんて事もよくある。

そして雅美が連れてきた子も見た事なかった。これって俺がコラボしなさすぎて分からないって事に原因がある気もする。


「僕は渚だよ。よろしくね」


「俺はマサです。よろしく」


「それで何で僕が連れて来れたのか知らないんだけど何かあったのかな?」


「雅美、まさか説明せずに連れてきたのか」


「うん、ちょっとめんどくさくなっちゃったから」


「ねーここに連れてきた理由を教えてよー」


「新しく配信部屋を、オフィスに作ったからアドバイスが欲しくて」


「えーと僕の家よりいい設備だよ?」


「「……」」


「まぁそんなに配信環境こだわらない人なら」


「単純にお金がないだけだよ」


「「……」」


「今からドスパラとか行くか?」


「そうだね。マサさんと渚さんが良いなら行こうよ」


「一応聞くけど何でいつも配信してるの?」


「Dynabookだよ」


「とりあえず2人ともパソコン買いに行くか」


「大須にドスパラとかパソコン工房的な物あったよな」


「マサさんのマネージャーの赤羽さんがたまに言ってるらしいよ」


「あの人何しに行ってるんだ?」


「マサさんに動画ネタを提供しようとしているらしいよ」


「ありがたいけど俺はガジェット系のVtuberじゃないんだよな」


この会社は大須近くにあるので歩いていこうかな。

てかこの時間の大須って昼食を求めて彷徨うクリーチャー的な人が多いので、混んでそうだな。


「2人とも準備するものとかあるかい?」


「俺はないな」


「僕もないかな」


「それならもう行こうよ」


3人で会社を出て大須に向かった。

大須行くならついでに京都行く時用に買って行こうかな。

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