【優子】Episode2 優一と冬華ちゃん

現地に辿り着いてからは大変だった。


紛争地域で看護師として働いた。


はじめさんは、私のサポートや現地住民の方との交流がメインのボランティアをしている。


あまり自由には、行動はできていないと思う。


中東に来て一年が経っていた。


日本ではもう4月・・・優一は高校2年生になっている頃だろう。


「優子、ぼちぼち帰国できそうだ」


「やっと!」


「呉のやつから全容は聞いたが、はぁ。

全く、めんどくさいことをしやがって」


「黒幕がいたの?」


「ああ、濱出 駿。覚えてるか?」


誰だったかな。


思い出せない。


「覚えてないみたいだな。

まあ、優一の同級生の徹は分かるよな」


「うん、その子なら」


「まあ、端的にいえば徹の兄で、俺達の大学の後輩だ」


大学の後輩にそんな人いたかな。


うーん、はじめさんや春ちゃん、夏生くんと過ごしてたことしか覚えてないな。


「とりあえず、優一に電話しとくか」


そう言って、はじめさんは優一に連絡を入れる。


「よう、優一元気にしてるかい?

俺も、母さんも元気だ。

おう、いいぞ?」


なんとなく小さな声で優一の声が聞こえる。


「おお、冬華ちゃん。久し振りだね・・・ん?そっちとの時差的に夜のはじめくらいか」


冬華ちゃんの声が聞こえてくる。


ん?え、2人が付き合いだしたの。


よかった、日本を発つ時に優一の様子がおかしかったけど元に戻ってよかった。


「マジか、冬華ちゃん。優一の事頼むな。

冬華ちゃんなら安心だ」


はじめさんだけ、話をするの狡いわね。


私も混ぜてもらわないと。


はじめさんを背中から抱きしめる。


「ちょ、優子さん」

「もうずるいわよ、はじめさん。

なんとなく聞こえてるけど、こっちもスピーカーにして。

もしもし、冬華ちゃん」


「優子さん、お久しぶりです」


「母さん、久し振り」


スピーカーモードにしたので、やっと二人の声がしっかり聞こえてきた。


「冬華ちゃん、いつも優一の事ありがとうね。

それと、冬華ちゃんなら私も娘にしたいから賛成よ」


「ありがとうございます、えへへ」


「ああ、父さん母さん。それで話があるんだ」


「聞かせてくれ、優一」


「多分気づいてるとは思うけど、今日から同棲を始めたんだ。

春さんと夏生さんにも許可は取ってあるよ。

二人も許可してくれるかな?」


「「もちろん」」


私達の声が重なる。


ずっと、昔からこうなってほしいと思っていたから嬉しい。


冬華ちゃんがいてくれたら優一はきっと大丈夫だから。


「節度さえ守れば問題ない。

冬華ちゃん改めて優一を頼む」


「はい、優一のこと任せてください」


「おっと、俺たちの用事を言い忘れた。

優一、冬華ちゃん。

もう少ししたら俺たち日本に帰ることになった。

日本だとGWあたりか」


GW・・・じゃあ、あと少し。


もうひと踏ん張りしなきゃ。


「え、そうなの。じゃあ、来月の終わりくらいだね。待ってるよ」


「わたしも待ってます。

はやくお二人に会いたいです」


「私たちもはやく貴方たちに会いたいわ。

さて、そろそろ切らないとね」


「じゃあ、二人共仲良くな」


「ああ、父さんも母さんもね」


「はじめさんも、優子さんもお元気で」


「「「「おやすみなさい」」」」


そうして、私達は電話を切った。


はやく日本に帰りたいよ。



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本編【第31話 幼馴染みと彼方からの電話】の裏話です。


駿編では語らなかったお話が実はまだあります。


呉治&藍編で真相が明らかになります。


次は、帰国後のお話。



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