【徹】Episode3 集団記憶操作

俺の日常は変わらなかった。


皆が、巧兄のことをよく言う。


俺は、落ちこぼれだと。


だから、俺は手始めに優一と冬華の中から巧兄との記憶を俺との記憶にすり替えた。


純恋にした誤認と同じことをしたんだ。


それで、この二人は俺が虐めから助けてくれたと勘違いした。


おかげで、それからの生活には召使が増えた。


だが、俺にできたのはここまでだ。


子供の力では、限界があった。


大人を言いくるめることはできなかった。


お通夜の日、駿兄に相談した。


「ふむ、それはよくない。よくないね。


いいだろう、僕が手を貸してあげよう」


「兄貴、ありがとう」


「例には及ばないよ」


駿兄は、童顔で実年齢よりも若く見える。


24歳にはとても思えないほどだ。


年齢を言わなければ18歳・・・いやもっと若く見えるだろう。


駿兄は、巧兄の告別式のあとで集まる弔問客の記憶を操作した。


『巧』という存在はこの日いなかったものとされた。


ただし、新聞のお悔やみ欄に刻まれた『巧』の文字は残り続けたが。


巧兄の遺骨は、駿兄が一族の墓へと納骨した。


このことで、双子だったことで利用してきたことができなくなった。


虐めの主犯で虐めを収めた者というおかしなことになっている。


だが、優一と冬華にバレなければ問題はないだろう。

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