【徹】Episode2 転校と扇動

そして、あの日は訪れた。


純恋が引っ越すことになったんだ。


でも、俺はそれを知らされていなかった。


俺が知ったのは、引っ越した後だった。


担任から引っ越したことを告げられた。


ある日。


巧兄が、純恋と文通を始めようと手紙を書いているのを見つけた。


俺は、それが出される前にコピーを取り名前を変えた。


手紙では、もしかすると巧兄を徹だと誤認してくれないと思ったから。


それから、俺は、巧兄を演じながら純恋と文通を続けることになる。


あいつが死んでからもなお。


純恋が、引っ越すことを優一も冬華も知っていた。


知らなかったのは俺だけだった。


悔しい。


なぜ、俺には知らされなかったのだろう。


その日から、俺の中で優一と冬華を虐めたい気持ちが強くなった。


そして、俺はクラスメイトを扇動した。


「なあ、あいつらいつも一緒にいるよな」


そう、その一言でクラスメイト達は虐めを始めていった。


小学生というのはそういう物だ。


男子が女子とつるんでいれば茶化し、虐めの対象にする。


あの頃の優一は何の取り得もなく、友達のいない奴だった。


そして、その虐めを止めたのは巧兄だった。


だが、あいつはその日の夕方。


居眠り運転の車に轢かれ死んだんだ。


やっと、俺は巧兄の呪縛から解かれた気がした。


これで、両親は俺のことを見てくれる。


そう思っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る