第45話 幼馴染みと両家団欒

女性陣はソファに、男性陣は地べたに胡坐を掻いている。

ソファは二人掛けと一人掛けとあって、二人掛けに春さんと母さんが座っている。

一人掛けに冬華が座っている。

その間に、そろぞれが胡坐を掻いている並びである。

仔猫は、春さんと母さんの前に作られた寝床で寝ていた。

実は、二人共猫が好きだったりする。

「改めて二人共「「「「お帰りなさい」」」」

「「ただいま」」

みんなで、声を揃えて挨拶をしていく。

「ピザうまっ」

父さんは、速攻でピザを食べていた。

相変わらず、早いな。

「冬華、何か取る?」

僕は、小皿を持って冬華に聞く。

「うん、優一に任せる」

「オッケー、適当に乗せてくるよ」

そんな僕たちを微笑まし気に見る大人たち。

なんか、恥ずかしいんだけど。

親にそんな顔されるよ、はずい。

僕は、とりあえずポテトやナゲット、ピザなどを小皿に盛る。

「はい、冬華」

僕は、ポテトを手に取って冬華の口に近づける。

「え、え。優一、あのあの」

うん、可愛い。

そして、周りの視線が痛い。

「あ~ん」

冬華の顔が、真っ赤になる。

たぶん、僕も同じな気がする。

「あ~ん」

そして、冬華がポテトを食べる。

「なあ、夏生。吞み行こうぜ」

「ああ、そうするか」

父さんと夏生さんは、連れ立って行ってしまった。

よく見ると二人はだいぶ食べていたようだ。

「優一、あ~ん」

「あ~ん」

僕の口に、ポテトが入れられる。

やばい、味がわからない。

「さすがにこれ見てたらはじめさんたちは逃げるよね」

「あはは、そうだね」

と、母さんと春さんが笑う。

最近は、よく食べ合わせばかりしていたから習慣付いてるだけなんだけど。

「わたしたちにしてくれてもいいのにね」

「それはたしかに」

それを尻目に僕たちは、食べさせ合いをしていた。

ホント自然にしているなぁ。

「ねえ、優一。冬華ちゃんとこれからどうしたいの?お母さん気になるなぁ」

「・・・結婚する・・・つもり」

「へぇ、優一がね。じゃあ、春ちゃん」

「もちろん、賛成だよ。優子ちゃん」

それで、何の会話ができてるんだ。

ほぼ、アイコンタクトじゃないか。

ちなみに、冬華は「えへへ」と言って真っ赤になるマシンになっている。

見てて、僕も顔が熱い。

「優ちゃん、冬華」

「はい」

「「二人の同棲は継続ね」」

二人の声が揃う。

「「え、いいの?」」

そして、僕らの声も揃う。

「だって、二人は元々そのつもりだったんでしょ」

と春さんが言う。

「それで、優一には来週から私たちの仕事を手伝ってもらいます」

「手伝い?」

「しっかりお給金はでるようにするわよ。

優一が、この先やりたい事にも直結するとおもうんだけど」

「優一のやりたい事?」

そう、冬華が首を傾げる。

彼女には言ってなかったな。

「僕は、介護の道に進みたいんだ」

「そっか、優一は決めてたんだね。進路」

「ああ、ごめん。急で」

「ううん、でも優一らしいから。

それに、はじめさんや優子さんのことをずっと見てきてその道を選ぶ理由はわかるよ」

僕の一番の理解者は、冬華だ。

絶対に離れたくない。

「冬華は、どうするの?

あなたは、あなたで好きなことをしていいのよ」

「えっと、私ひとつ・・・一応二つやりたいことがあるの」

「栄養士になりたいなって」

「そうそれもいいわね。で、もう一つは?」

母さんたちが、悪戯な笑みを浮かべて僕を見る。

僕もなにかは分かった。

「もちろん、優一のお嫁さん・・・」

冬華が、顔を真っ赤にしていた。

というか、ずっと真っ赤のままだった。

「ねえ、春ちゃん」「ねえ、優子ちゃん」

二人が同時にお互いを呼ぶ。

そして、鏡合わせの様に頷く。

この二人の会話ほんとどうなってんの?

言葉にしなくても通じ合うってすごいんだけど。

「「許嫁」」

「「え?」」

「今日から許婚って名乗りなさいな」と春さん。

「私たちが許可するから」と母さん。

たしかに、幼馴染みだけど、いまは恋人で、結婚することを許してくれたから許婚ってことか。

「というか、元々許婚なんだけど」

ん?なんかおかしなことを言ってるな。

元々許婚ってどういうこと?

「そりゃそうよ、私たち幼馴染み4人がそれぞれカップルになって男女で子供出来たんだからしてないほうがおかしいでしょ」と母さん。

「だから、私もあなたたちならいいっていたじゃない」と春さん。

僕らは、昔から両親の掌の上で転がされていたみたいだ。

「それで、優一はバイトして立派な指輪を冬華ちゃんにあげなさいな」

母さんには、全部バレていて僕がそうするためにバイトをすることまで読まれていたってことか。

「じゃあ、なにか?僕らは、元から婚約者だったってこと?」

「そうよ、だから周りの事なんかもう気にしなくていいの。

どうせ、二人共お互いがいないとダメなんでしょ?

もう、目移りすらできないくらいに」

母さんに言われて、僕らは自然と頷いていた。

「それに、呑みに行った二人はどうせこのことを言わないでしょう」

「あはは、あり得る。優子ちゃんと私が言うと思ってるよね」

僕は、冬華を見る。

彼女も僕を見ていた。

「えっと、冬華。

僕は、冬華の事が好きだからずっと一緒にいてくれる?」

あれ?僕は何を言っているんだろう。

これって、完全にプロポーズだよね。

「はぃ、私で・・・不束者ですがよろしくお願いします」

と冬華は言い終わると顔を両手で覆う。

そして、母さんと春さんがニヤついていた。

「優ちゃん、まさか親の前でプロポーズなんて。

こっちが照れちゃうわ」

「優一、あなたって子は。

はじめさんみたいよ」

母さんの顔が赤い。

「ああ、あったね。そんなこと」

「あの時はとっても恥ずかしかったわ」

僕には、父さんの血が色濃く継がれているということだろうか。

そうして、この時から僕たちは許嫁になった。

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