第43話 幼馴染みと命の重み3

僕らは家に帰って来た。

「ねえ、優ちゃん」

「あ、はい」

「私も今日はこっちに泊まるから」

「え、ママ?」

僕としてはとても助かる。

明日からは土日だから僕らも見ていられる。

でも、仔猫は2時間おきにお世話しないといけない。

子育てとほとんど同じらしい。

「助かります、実際そんなに手間がかかるとは思ってはいませんでした。命の重みがここまで重いなんて」

「子供なんだからしななくても仕方ないわよ、私はこれでも冬華ももちろん優ちゃんも育ててきたのだから任せなさいな。

それに、いつか必要になることよ」

春さんは、ウインクしながらそう言った。

敵わないな、本当に。

「わたしなにがなんなのか、わからないんだけど」

「う~ん、冬華にはまずはこの冊子を渡しとくよ」

僕は、病院でもらった冊子を冬華に渡した。

さて、寝床を作らないと。

段ボールがどこかにあったな。

あとは、クッションと毛布かな。

「優ちゃん、寝床の準備はできそう?」

「はい、やりますね」

僕は、家の中から必要な物を揃えていく。

やがて、僕がリビングに戻ってくると冬華が頬を染めながら冊子を読んでいた。

たぶん、僕と春さんの会話の意味が分かったのだろう。

「寝床準備できました」

「優ちゃん、ありがとう。じゃあ、寝かせましょう。

冬華はもう覚えた?」

「う、うん・・・」

「ミルクの準備手伝って、あと優ちゃんはペットボトルのお茶4本くらい買ってきてもらえる?」

「ペットボトルカイロですね、じゃあコンビニまでいってきます」

ペットボトルカイロ、要は寝床を温めるために使おうとしている。

ペットボトルはお茶の容器なら熔けないのでそれを利用する。

僕は、財布を持っていることを確認してコンビニに向かった。


コンビニでペットボトルのお茶を4つと猫用のミルク・・・あるだけ買った。えっと、5個かな。

それと、サンドイッチと総菜をいくつかとプリンとシュークリームを。

買い終わった僕のスマホが久し振りの着信音を鳴らす。

すぐに、コンビニから出る。

そして、液晶に映った名前を見て驚く。

「母さん」からだった。

「もしもし、母さん?」

「優一、久し振り・・・といっても先月話したばかりだからそこまでかしら?」

「まあ、そうだね。あれ?ノイズ少ないね」

母さんのケータイからのノイズが少ない気がした。

割とクリアに聞こえる。

「それはそうよ、国際電話じゃないもの」

「え?帰国したの!?」

「そうよ、だから連絡したの。

そっちは、いま外かしら?風切り音が聞こえるわね」

「いま、コンビニに来てて」

「あら、そうなの?じゃあ、もうすぐ会えそうね」

そう言うと電話が切れた。

あれ?GWっていてなかった?

もう帰って来たのか。

僕は、急いで冬華に電話をかける。

「もしもし、冬華?」

「うん、どうかしたの?お茶売ってなかった?」

「えっと、そっちスピーカーにしてもらえっていい?」

「う、うん。どうぞしたよ」

「いま、母さんから電話が来て。今日帰って来るって」

「「え、そうなの」」

と冬華と春さんの声が重なった。

僕は、足早に家路を急ぐ。

「さっきの言い方からするともうすぐ着くようです」

そう言った瞬間、僕の背でクラクションが鳴る。

長いクラクションではなく、合図のような短いクラクション。

僕は、振り向く。

そこには、懐かしい姿が・・・。

「あ~、こっちで合流しました」

そう、僕は告げた。

2年ぶりの両親だ。

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