第42話 幼馴染みと命の重み2

動物病院に着いた僕らは母猫と仔猫たちの診察をしてもらっていた。

前もって、連絡を入れておいたおかげですぐに診てもらえた。

「母猫は当院に来た時にはもう息がありませんでした」

やっぱり、そうだったのか。

あの違和感は、やっぱりそういうことだったんだ。

「仔猫に関してですが、4匹が初乳できなかったようです」

仔猫は、初乳できないと免疫を受け継ぐことができない。

4匹は、免疫が弱いということ。

2匹とは、一緒にはできない。

「野良だったようですが、いかがされますか?」

僕は、春さんを見る。が、首を振る。

冬華は、悩んでいるようだった。

「春さん、すいません」

「優ちゃんが、決めるなら大丈夫よ」

僕は、決めてしまった。

「先生、2匹はうちで引き受けようと思います」

「わかりました、では初乳できなかった4匹に関してはこちらで里親を探すことにします」

「よろしくお願いします」

「でわ、準備をしますので待合室でお待ちください」

僕らは、待合室へ向かう。

春さんが、僕の耳元でささやく。

「冬華の為?」

「と言いたいですけど、自分の為です」

「そう・・・まったくそっくりなんだから」

そっくり・・・たぶん、僕の両親の事なんだろうな。

春さんたちも幼い頃から、僕の両親と一緒に過ごしてきたのだから。

「冬華、仔猫たちの世話頑張るのよ」

「うん、ママ。私、頑張る」

「気負わなくていいのよ、私も手伝うからね」

春さんは、冬華が猫が好きなのももちろん知っている。

飼いたいと思っていたことも、きっと。

だから、冬華の為かと聞いたんだろう。

冬華の為だと答えていたら、僕は怒られたと思う。

「命の重み」。それは、口にするよりも重い。

「木倉さん、お待たせしました」

僕の名前が呼ばれた。

受付へと向かう。

そこで、諸注意を聞いた。

仔猫の育て方や注意しなければならないことなど。

そして、僕らは仔猫2匹を連れて帰ることになった。

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