第34話 幼馴染みと絶望の日2 忍び寄る足音

「よう、優一!今年もよろしくな」

陽太が、教室にやって来た。が、僕のそばまでくるとギョッとした。

なぜなら、冬華が僕にべったりくっ付いているから。

ちょうど入り口からだと死角なんだよね。

僕の席、一番後ろの席だったから。

「えっと、藤ヶ崎さんだっけ?」

「はい、藤ヶ崎 冬華です。いつも優一がお世話になってます」

「あれ?なあ優一。なんか、藤ヶ崎さんのイメージが」

「冬華、こいつは窪 陽太だ。

んで?冬華のイメージ?僕にはこれが普通なんだけど」

僕は、冬華を見る。が、彼女も首を傾げている。

そういえば、1年の初めの方の冬華って・・・。

「あ、そうか。お前の言うイメージは前の冬華のイメージか。

僕ら1組は、学校来てなかったからだ」

「なるほど、優一と会えなかった頃の私はたしかに」

冬華が悲しそうな顔になる。

「冬華、大丈夫だよ」

「うん、そうだよね」

陽太が、冷ややかな目で僕らを見てくる。

「おい、バカップル!」

「陽太、やめとけ。たぶん、何言ってもダメだ」

陽太の肩を宗の手が乗せられていた。

宗の後ろにも、浩平もいた。

「冬華、陽太の後ろが久良 宗。その後ろが間嶋 浩平だ。

僕の友達は、この3人だよ」

「宗さん、浩平さん。いつも優一がお世話になっています。

私は、藤ヶ崎 冬華です。よろしくお願いします」

「「藤ヶ崎さん、よろしく」」

二人は、揃ってそう言った。

「なあ、宗。浩平」

「いや、気分はすごくわかるよ。わかるんだけどさ」

「俺らには何もできん。お幸せにとしかいえん」

3人は、呆れた顔で僕を見ていた。

「あ、そうだ。お二人さん、すまないが、ちょっといいか」

陽太が、出口を差してそう言った。

何か話があるようだった。

「宗も浩平もきてくれ」

僕らは、5人連れ立て中庭に出た。

「すまん、割と重要なことだったんだ。

教室では言えんやつだ」

「それで、何のことだ?」

僕は、陽太に尋ねる。

ちなみに、冬華は僕の左腕に腕を絡めている。

「クズ男の話なんだ」

冬華が強張る。

僕は、冬華の頭を撫でる。

「大丈夫だ、続けてくれ」

「お、おう」

陽太は、一呼吸おいて話し始める。

「確か、春休みに入ったくらいからなんだが。

女の子が嗅ぎまわってるらしい」

「はぁ?いまさらか?」

「ごめん、俺もその話は聞いた」

「俺もだ」

3人とも知っているようだ。

春休みからか。

3ヶ月も経って、ほんとに今更なんだが。

「女の子ってことは、警察関係ではないのはたしかだよな」

僕の頭に、純恋ちゃんがふと思い出させる。

「特徴とかわかるか?」

「ん?なにかわかるのか?」

「僕の予想だと、春休みあたりからなら一人心当たりがある」

冬華も、同じように頷く。

「茶髪でサイドテール、おっぱいちゃん」

もう特徴が一致する。

たぶん、純恋ちゃんで間違いないな。

「ああ、思った通りかも。

その子は、僕らの幼馴染みだ。

北海道から引っ越してきて今日から西高に入学する」

「え、年下。マジか」

3人とも驚いているということは見たということか。

こいつらは、こいつらで僕らを心配してくれてるんだよな。

「なあ、思ったんだが「おまえら、なにしてる!始業式始めるから移動しろ」」

陽太の声を遮るように、教師の怒号が飛ぶ。

僕らは、講堂へ向かっていく。

「つづきは、放課後だな」

「あ、悪い。今日は、冬華の母さんと昼飯の予定があるんだ」

「おっと、じゃあまた後日かチャットにするか」

「そうだな」

そういいながら僕らは歩いていた。

僕らは、このあと起こることに気づかずにいた。

この時気づいていれば、この後の悲劇を回避できたのかもしれない。

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