第32話 幼馴染みとはじめての夜

僕らは、改めてキッチンに立っていた。

夕飯を作ることにしたからだ。

お互いに料理ができるからか、お互いが何をしたらいいのか何をしてほしいのか言葉を交わさなくてもできたりもする。

「えへへ、なんかこういうのいいね」

「そうだな、何回か一緒に作ったことはあったけど。

なんだろうな、すごく新鮮に感じる」

僕らはお互いにエプロンをしていた。

これも、さっき買ってきたものだ。

ピンク色を基調にしたチェックのエプロンを冬華がしていて、僕は青を基調にしたチェックのエプロンをしている。

ワンポイントでポケットのところに猫がひょっこり顔を出している。

「冬華、エプロン似合うね。可愛いよ」

「えへへ、ありがとう。優一も似合うよ。

同じものなのに優一がつけるとかっこいいね」

「あ、ありがとう」

僕は、急に照れくさくなった。

滅多に、冬華にかっこいいなんて言われないからかな。

「お腹空いちゃった、早く持って行って食べよ」

「ああ、そうだな」

僕らは料理をダイニングテーブルに並べていく。

「飲み物どう?」

「今日は、紅茶の気分かなぁ」

「オッケー、持ってくるから。冬華は先に座ってて」

「はぁい」

僕は、冷蔵庫に入れてあるフィルターインボトルを取り出し買ってきた赤と青のマグカップに入れていく。

基本的に赤が冬華の物。青が僕の物だ。

シロップピッチャーにガムシロップを半分くらいと肉球マークのつぼと柄が猫柄が刻まれているティースプーンをトレーに載せてダイニングに向かう。

「優一、ありがとう。

えへへ、ガムシロップもありがとう」

「さてと、食べるか・・・ん?僕の席は冬華の横かな?」

僕のカトラリーが冬華のとこに置かれていた。

そこに座ってほしいのだろう。

「だめかなぁ?」

「いいよ」

僕は、冬華の隣に座る。

彼女としては、お昼と同じように食べさせ合いをしたいんだろうと思った。

僕も、嬉しいから構わない。


その後、僕らは食べさせ合いをしながら夕飯を食べた。

そして、二人で片づけをしてリビングで少しゆっくりしていた。

時刻は、20時を超えたくらいだ。

「優一、お風呂どうしようか・・・」

「冬華・・・あのそれは・・・別々に入ろうか」

「そ、そうだよね・・・変なこと言ってごめん」

あからさまにがっかりしている気がする。

でも、さすがに今日は限界。

嬉しいことばかりだから。

「また今度一緒に入ろうか、それじゃダメかな?」

「ううん、一緒に入ってくれるの分かったから大丈夫」

冬華の顔が赤くなっていた。

たぶん、僕の顔も赤くなってる。

ちょっと気恥ずかしくなってきた。

「えっと、私先にいただくね」

「ああ、ゆっくり入ってきなよ」

そういって、冬華を見送る。

まさか、彼女があんなことを言うとは思わなかった。

でも、嬉しかった。

それだけ、愛されているってわかるから。


冬華が、お風呂から上がって来たのは30分ほど経ってからだった。

柑橘系のキリっとした匂いと冬華の甘い匂いがする。

髪も少ししっとりしている。

ゴクッと僕は、無意識に生唾を飲み込んでいた。

あまりにも、艶やかで見とれていた。

パジャマは、赤いスウェット生地のパジャマだった。

これも日中に買った物である。

僕のは、青いスウェット生地である。

「えへへ、優一。お先いただきました」

「うん、じゃあ僕も入って来るね」

ドキドキする。

風呂上がりの冬華は、初めて見た。

子供の時は、よく見ていたけど。

その時とは違って見える。

お互い成長したってことかな。

冬華は、見た目は幼いけど年相応に色気があるから。

ダメだ、考えすぎるとドキドキしすぎちゃう。


僕は、悶々としながらお風呂を上がる。

冬華は、リビングでドライヤーを掛けていた。

「お帰り、優一。まだ、濡れてるよね」

彼女は、横に座るように促してくる。

僕は、それに従うように冬華の横に座る。

「えへへ。私、夢だったんだ。

優一の頭乾かすの。これから毎日していい?」

「いいよ、冬華がやりたいなら。

僕は、嬉しいから」

「じゃあ、毎日優一の頭乾かすね」

冬華は、はにかんでいた。

幸せだな。この瞬間が毎日続くことを願う。

「ねえ、優一。今日は、一緒に寝ていい?」

「いいよ、僕もそう思ってたから」

「あ、エッチなのはダメだよ」

「わかってるよ、今日はいろいろありすぎて幸せが溢れちゃいそうだよ」

「あ、それ私もわかるよ」

お互いに、同じ気持ちだってわかるとより幸せを感じる。

いいな、こういうの。

自然と笑みがこぼれてくる。

その日、僕らは寄り添うように眠りについた。

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