第31話 幼馴染みと彼方からの電話

買い物袋をダイニングに置き、僕らは一息ついていた。

「えへへ、二人きりだね」

「そうだね、今日からはこのままずっといられるんだよなぁ」

「うん、これからはずっと一緒だよ」

お互いに頬を赤らめていた。

なぜか、すごい気恥ずかしかった。

いままでは、夕方くらいには帰っていたからすごく新鮮だ。

「冬華、夕飯どうしようか?」

「まだあとでいいよ、でも一緒に作ろ」

「そうだね。とりあえず、買ったもの整理しようかな」

僕は、さっき買ってきた食器類を持ってキッチンへと向かった。

一通り洗って後で使うためにね。

「優一、わたしお風呂の準備してくるね」

冬華は、シャンプーやスキンケアの入ってる袋を持って浴室へと向かった。

ドキドキする。

なぜだろう。すごい意識してしまう。

今までだってずっと一緒にいたのに。

なんで、こんなに意識してるんだろう。

僕は、とりあえず洗い物に集中することにした。

今回買ったものはどれも猫をモチーフにしたマークや柄が付いているものが多い。

お箸も猫柄の色違い、マグカップも猫柄で色違い、お茶碗も猫柄の色違い、お皿はワンポイントで猫が描かれている。

冬華は、猫が好きなんだ。

僕も、猫は好きだ。

「優一」

僕は、後ろから冬華に抱きしめられた。

「どうしたの?冬華」

「えへへ、なんか嬉しくなっちゃって」

「そうだね、僕もだよ」

そう言った時だった。

僕のスマホから普段鳴らない着信音が鳴ったのは。

液晶を見る「父さん」の文字が見えた。

冬華にも、それを見せるとすぐに放してくれた。

ちょっと残念だったが、急いで出ないと。

「もしもし、父さん?」

『よう、優一元気にしてるかい?』

「ああ、元気だよ。そっちはどう?」

『俺も、母さんも元気だ』

「そう、ならよかった。

あ、ごめん。父さんスピーカーにしていいかな?」

冬華が、話したそうにしているのが見えた。

『おう、いいぞ?』

「はじめさん、お久しぶりです。冬華です」

『おお、冬華ちゃん。久し振りだね・・・ん?そっちとの時差的に夜のはじめくらいか』

「ああ、父さん。ちょうどそのことで話かったんだ」

良い時に、電話が来たと思った。

国際電話だ、こちらから掛けるわけにはいかない。というかタイミングが分からない。

「僕たち、付き合い始めたんだ」

『マジか、冬華ちゃん。優一の事頼むな』

「もちろんです」

『冬華ちゃんなら安心だ・・・ちょ、優子さん。』

もうずるいわよ、はじめさん。

なんとなく聞こえてるけど、こっちもスピーカーにして。

もしもし、冬華ちゃん』

「優子さん、お久しぶりです」

「母さん、久し振り」

父さん側も、スピーカーモードにしたらしく母さんの声が聞こえてきた。

『冬華ちゃん、いつも優一の事ありがとうね。

それと、冬華ちゃんなら私も娘にしたいから賛成よ』

「ありがとうございます、えへへ」

「ああ、父さん母さん。それで話があるんだ」

『聞かせてくれ、優一』

「多分気づいてるとは思うけど、今日から同棲を始めたんだ。

春さんと夏生さんにも許可は取ってあるよ。

二人も許可してくれるかな?」

『『もちろん』』

『節度さえ守れば問題ない。

冬華ちゃん改めて優一を頼む』

「はい、優一のこと任せてください」

『おっと、俺たちの用事を言い忘れた』

そういえば、要件聞いてなかったな。

ついついこっちの話ばかりしてた。

『優一、冬華ちゃん。

もう少ししたら俺たち日本に帰ることになった。

日本だとGWあたりか』

「え、そうなの。じゃあ、来月の終わりくらいだね。待ってるよ」

「わたしも待ってます。

はやくお二人に会いたいです」

『私たちもはやく貴方たちに会いたいわ。

さて、そろそろ切らないとね』

『じゃあ、二人共仲良くな』

「ああ、父さんも母さんもね」

「はじめさんも、優子さんもお元気で」

「「『『おやすみなさい』』」」

そう4人の声が聞こえた時、向こう側から通話が終了した。

よかった。同棲を始めたその日に話せて。

「えへへ、はじめさんと優子さんと話せてよかった」

「ああ、そうだな・・・春さんたちにも知らせないとな」

「あ、そうだね。私、ママにメッセージいれとくよ」

「冬華、よろしく」

僕は、キッチンを出てダイニングに腰を下ろした。

そっか、父さんたち帰ってくるのか。

嬉しさと残念な気持ちが半分半分かな。

だって、冬華との同棲も1ヶ月限定ってことだもんな。

もちろん、父さんたちが帰ってくるのも嬉しい。

「ああ、そうか純恋ちゃんの件もどうにかしないといけないんだな」

「うん、私たちだけじゃ解決とか無理かもだけど。

手助けはしてあげたいね」

「そうだな、まずは純恋ちゃんとお父さんの対話が必要なのは確かだな」

僕らは、いまある問題をどう解決していくか悩んだ。が、その夜それ以上の答えが出ることはなかった。




遂に、優一の両親 はじめと優子登場です。

実際の登場は、4章からになります。

さて、もうすぐ3章終盤になりますが

もう1話お待ちください。

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