第26話 幼馴染みと嫉妬

翌朝、僕は朝ごはんを作っていた。

とりあえず、三人分。

なぜか、無性に寂しくなって短睡眠で目が覚めてしまった。

僕は、すっかり冬華がそばにいないとダメになってきている。

とにかく、黙々と料理を作った。

寂しさを埋めようとほぼほぼ無心で。

気が付いたら、ダイニングのテーブルの上には10品ほどの料理が出来上がっていた。

時間も1時間以上溶けていた。

「いい匂い」

と二階から冬華の声が聞こえた。

ああ、起きたのか。

「おはよう、優一。

えへへ、朝起きたら優一がいるの新鮮」

イブのあの日以降、冬華がうちに泊まったことはない。

必ず夜には自宅に帰っていたから。

「純恋ちゃんは?」

「う~と、あれは当分起きないと思う」

僕は、それを聞くや否や冬華を抱きしめていた。

彼女もまた腰に腕を回して返してくる。

「もう、優一ったら」

「どうも、冬華がそばにいないとダメみたいだ」

「嬉しいけど、そんなこといったら私、帰れなくなっちゃう」

お互いの顔は、今は見ることができない。

僕の頬は、赤く染まっている。

耳まで、熱い。

「冬華」

「はぁい!」

びっくりしたような、声を上げる冬華。

「一緒に住まないか?」

「ど、同棲・・・てこと?」

「うん、だめかなぁ」

僕が、こんなに独占欲が強かったんだと昨晩気づいた。

誰かの隣に冬華がいる。

それだけで、僕は耐えられないみたいだ。

「私はいいけど、ママたちに聞いてみるね」

「冬華、それは僕に任せてくれないかな?

僕に、責任の一端があるから」

「う、うん。優一がそういうなら」

あとで、春さんたちに相談に行こう。

僕は、抱きしめていた冬華を解放してダイニングに誘った。

「さあ、まずはご飯にしよう」

「うん、優一。すごく豪華な朝食なんだけど」

「あはは、えっと・・・ごめん」

「優一が夜どういう気持ちでいたかわかったから」

冬華は、ダイニングテーブルの上の状況で察したようだった。

笑みを浮かべて、やがて口元を手で覆った。

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