第12話 幼馴染みと動き出す時間
冬華の顔を直視できない。
すっごい恥ずかしい。
後悔はしていないんだけど、すごい恥ずかしくて。
でも、離れたいとは思えなくて・・・。
ダイニングテーブルの対面は、恥ずかしすぎる。
僕は、リビングのソファに場所を移した。
それを追うようについてくる冬華。
寄り添うようにソファに座って来る彼女。
「あの、冬華?」
「どこにもいっちゃやだ」
凄い甘えた声で、そう言われるとなんでも許してしまいそうになる。
僕の心臓が早鐘を衝く。
頬が熱い。
「ねえ、優ちゃん。
私、徹くんが浮気してたからショックを受けてたんじゃないよ」
「え?」
「2割くらいは確かにショックだったけど、なによりもショックだったのは徹くんに割いた時間だけ優ちゃんと歩めたはずの時間が無くなってることにショックを受けたの。
徹くんへの気持ちが恋じゃないのは薄々感じてた。
でも、その時には優ちゃんはいなくて。
私は流されてたんだ。うちの学校進学校でしょ。
私、実は勉強についていけなくて必死で勉強してた。
だから、遊びなんて二の次だった。
徹くんとは恋人同士だったけど、たぶん形だけだったんだろうね」
「一昨日、僕のとこに来たのは」
「無意識に・・・優ちゃんに無性に会いたくなったから。
優ちゃんなら、思い出の中の優ちゃんならきっとて」
僕らは、ここからまた始めればいい。
失った時間は戻らないけど、それを忘れるぐらいに色濃く一緒にいたい。
僕の大切な人。
「じゃあ、冬華の勉強は僕がみてあげるね」
「え?」
「あれ?冬華同じ学校なのに知らなかった?
僕、いつも上位にはいたのに」
「全然知らなかった、平均点落とさないように必死だったから」
「僕に任せて」
止まっていた僕らの間の時間が少しずつ動き出した。
徹の死。
そこから、少しずつ動き出す。
彼が歯車に入り込んだ異物だったかのように。
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