第11話 元幼馴染みの末路

ポロンと僕のスマホが鳴った。

一昨日の男子会したメンバーとのグループチャットが更新されていた。

『優一、ニュースみたか?』と書かれていた。

「ニュース?」

「優ちゃん、どうしたの?」

「いや、なんか男子会してたメンバーからニュース見たかって」

僕らは、首を傾げリビングのテレビを点けた。

ちょうど、テレビでは一軒家の映像が流れていた。

あれ?ここって見たことある気がする。

「ねえ、優ちゃん。

ここ、徹くんの家じゃない?」

冬華にそう言われて僕は記憶を辿る。

たしかに、言われてみればそんな気がする。

テロップを見た瞬間。

僕は、すぐにテレビを消した。

僕の瞳に移ったのはこんなテロップだった。

『高校生カップル刺殺。クリスマスの夜の悲劇』と。

僕は、冬華を抱きしめていた。

いや、冬華に抱きしめられていた。

「あいつ、死んだのか。

そりゃあ、10股してるやつが恨み買わないわけないか」

「優ちゃん、私もしあの日徹くんと一緒にいたら・・・」

「冬華がイブに家に来てくれてよかった。

僕の気持ちが・・・いや、不謹慎だな」

僕らは、抱きしめ合っていた。長い間。


なあ、徹。

一応、僕は一つだけは感謝してる。

小学校の頃、僕と冬華が虐められていたときに助けてくれたあの時の事。

ヒーローだと思った。

だから、いざってときは頼りになるって。

たぶん、冬華もその時の事があったから・・・。

いや、お前はクズだよ。

どうしようもないクズだ。

どうして、お前は小学生の時の正義感を捨ててそんなに堕ちちまったんだよ。


「ねえ、優ちゃん」

「なに?冬華」

「もう、優ちゃんしか信じられないや。

ずっと離れていて、いまの優ちゃんのこと知らないけど。

でも、変わらず優しくて・・・尻軽だって思われるかもだけど。

私、やっぱり優ちゃんの事が好き。

なんで、いまさらって思うかもだけど。

近くにいすぎて、兄弟のように思ってた。

でも、離れて気づいたの。この感情は違うんだって。

私、自分の感情に鈍感で。恋に恋して見えなくなってたんだと思う。

初めて告白されて、ドキドキしてその気持ちが恋なんだと思った。

でもね、本当の恋はこんなに切なくて、離れたくなくて、愛おしくて」

僕の頬を、涙が零れた。

ああ、僕が欲しかった言葉だ。

あの日、欲しくてたまらなかったものがそこにはあった。

「ヒーローへの憧れが恋なんだと思ってたと思うの。

でも、優ちゃんを思うだけであなたの隣にいたい。

抱きしめたい。今何してるんだろうって。

ずっと、想ってた。

優ちゃんに無視されて寂しくて、悲しくて、もういいやってなってた。

私、うざいかなぁ?」

僕は、そう言った冬華の唇を塞いだ。

愛おしくて、抱きしめたくて、話したくなくて。

悲しい顔を見ると、胸が締め付けられるようで切なくて。




僕は、長い口づけをした。

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