『第二話』
「奴等が逃げたぞ、者ども、出会え! 出会えい!」
「ちっ、バレたか! 仕方ない。派手に暴れさせてもらうぜ……!」
「まったくエリシーズったら。そう言いながらも顔は笑ってる。本当に心の底から戦いを楽しんでる。かつて王国騎士団のトップだったお父様の血とは言え、危機を自ら望んでいるとも言えるその性格、いつかきっと仇になるわ。でも、そのワイルドさに惹かれちゃった私も同類なのかもしれない……!」
地下牢エリアから脱出したエルシーズたちは螺旋状の階段を駆け上がっている。
向かう先からは怒号がし、槍や斧を構えた兵士たちが我先に押し寄せてきていた。
「はっはっはっ! そうこなくっちゃな。こそこそ逃げ回るなどそもそも俺の性分には合わん! 全員まとめて地獄に送ってやろうじゃないか!」
最後尾のデガッドが吼えるように笑い、遂にダーク大工の最強武器、ダークハンマーに手を掛けた。このダークハンマーはダークパワーを秘めたダーク火山でしか採れないダーク溶岩をダーク鍛冶士がダーク鋳造をし、あとは聖なるセイント焼き入れ、ダーク焼き戻し、という聖なる力と闇の力を行ったり来たりさせることで慈悲と狂気の相反する属性を同時に備えた
なお、且つてこの武器は旧カザルミナンドで活躍したとされる英雄モーダスが携行し――
「いいやデガッド、あの数……キリがないぞ。この城にどの程度の兵が居るのか判らん以上、同じ場所で戦い続けてはやがて追い詰められる! ここは一時撤退じゃ! それに今は儂が先頭。この階段は狭く、必然的にまず儂が奴らにやられることになる! この水晶玉でナビするから一旦
「奴らが逃げるぞ! 者ども、出会え、出会えい!」
ギダルフの言葉通り、階段上からは完全武装した兵士たちが、更に群れをなし駆け降りてきている。さすがのダークドラゴンハンターズも多勢に無勢、しかし類稀なる判断力でこれまでの危機を切り抜けてきた彼らは、今回もまさに極めて冷静に状況を判断し、この危機を脱することに成功したのだ。
「――ふうっ、危なかったわね。大量の兵士に追い詰められて応戦している最中、偶然、ギデガッドのハンマーが近くの石壁を叩いて、地上に至る別ルートとなる秘密の通路をこじ開けなければ、やられちゃうところだったわ……ところで久しぶりに全力で走っちゃって、汗かいちゃった」
そう言いながら、メルアリーは魔導士のローブをはたはたと振り、あろうことか大胆にも捲り上げて、脱ぎ始めた。普段はローブの下に隠れている見事な肢体が露わになる。汗で湿った内着はぴったりとその身体のラインを際立たせている。
それはまるでみずみずしい果実のような――
「や、やめろよメルアリー。そんな人前ではしたないぞ」
「うふふ、今更なあに? これまで何度も、もっとはしたないものを見てきたくせに」
「な、なんだと……!? エリシーズ、それは本当なのか! 俺の想いは知っているだろう! 亡き妻の幻影を重ね、しかし亡き妻への想い――それは呪縛なのかもしれない――を吹っ切ろうとしながらも、日々罪悪感に苛まれている俺の立場も……!」
「…………」
「なんとか言え貴様ァ!!」
「やめろダガッド、今はそんな事を言い合っている場合ではなかろう」
赤面し顔を伏せたエリシーズに激昂したダガッドが掴みかからんとしたその時、それを制したのはギダルフの限りなく落ち着いた呟きだった。一見、ひ弱な老人の何気ない発言だったが、ダガッドは恐れ慄いたようにびくっと身を強張らせ、一歩、二歩と引き下がった。
「す、すまんギダルフ。つい……あ、アレだけはよしてくれ。アレをされると俺は……」
「ほっほっほ。それはこれからのお主の働きによるじゃろうな。さ、判ったらとっととこのようなカビ臭い城から脱出じゃ。この水晶玉は最初からずっと"上"を指しておる。ワシらが向かうべきところは最初から決まっておった。それは地上ではなく、満天の星に彩られた、吸い込まれるような星空じゃ……!」
エリシーズたちが地上に飛び出すと、城の上空に、もう一人の仲間が駆る飛行船が到着していた。ギダルフの水晶玉の予言の的中率は185%であることが、ここでも証明されたのである。どういうことかというと、地上までの距離で100%、あと85%は空中までの距離であったということが、ここで明らかになった。
―――――――――――――――
ぼくはもう、なんか逆にへらへら笑っていた。
これを世に出そうとした勇気そのものを褒めた方がいいと思ったし、こんな程度でも世に出していいんだと思うと気が楽になってくる。
そして相変わらずの説明台詞に全振りである。
そもそも、一般的には、物語上の”台詞”には四つの機能があるとされている。
『感情』『思考』『個性』『推進』だ。
台詞の一つ一つに、そのキャラクターの個性が乗り、キャラクターがどういった考えを持ち、どのような感情でそれを喋っているのか、という役割がある。
そして何よりもその全てが『物語』を先に進めるための足掛かりになる――
だからって全部の台詞に何でもかんでも全部乗せたらダメっていういい例だよねこれは!!
大体さあ、城、とか地下牢、とか常にふわっふわした場所のワードしか出てこないから周囲の状況とか背景が全く浮かばんのよ。それはそれで読者の想像力と解釈の幅が広いみたいな言い方もできるけど……まあいいや全部言ってたらキリがないわ。文字数もアレだ。
まあまずはデガッドくんだ。家族とか皆殺しにされたって背景の説明があったばかりにしては物騒過ぎない? 地獄に送るとか。やってること仇と一緒じゃん。元々そういう一族だったから皆殺しにされたとかそういう背景があるんでないの。伏線ってやつか。深読みしすぎか。
んで、ダークハンマーのくだりはまんま要らない。
ごめん、この武器の略歴が延々と続いたから読み飛ばしちゃった。いいよね?
ギダルフの『ナビ』もどうなのよそれ。そもそもナビって言い方をしていいキャラじゃないでしょあんた。そして追ってくる兵士がまた同じ台詞……あれかい? バンクかい? 小説で台詞をまんま再利用するって初めて見たよ。画期的だ。すごい。
偶然抜け道が……うう……まあいいわもう。これまでのバタバタは何だったのっていうのはもういい。そういうご都合主義で助かるのはまあ、まあまあ、よくあることでしょう! でもな地の文で偶然、って言い切っちゃうのはもっと工夫せいと。
そして唐突なちょいエロサービスシーンですか。やるならちゃんとやれ。
匂わせもまんまやんけ!! あああああそして痴話喧嘩!!
この、なんか、こう、ダメな海外ドラマでありがちな! 重要な局面で色恋沙汰を持ち込むやつ!! ストーリーにぃ、自信を、持て!!
実直にやってくれたらこっちもちょっとは誠実に向き合う気持ちになれるからあ!
はあ。あ、なんか水晶の予言について語ってら。
パーセンテージの割り振りですか。うん……。
うわー、すっごくどうでもいい。引きに使うほどのことじゃない。
え? 続くの? マジで? 正気か?
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