『第三話』※読み飛ばし可

「よおう! 待たせたな、助けに来てやったぜ! わざわざ出向いてやったんだ、今日は晩飯を奢れよ? 全くお前らと来たら毎度毎度無茶を言いやがる。仮にも魔術的な防空対策を施された城に単騎で乗り込むなんて、生粋の博打好きであるこの俺、マハト様でも些かの躊躇を禁じ得なかったぜ。さあ、何をボケっとしてやがる。俺たちダークドラゴンハンターズの主な移動手段兼、拠点である飛行船『サンクチュアリ』に早く乗りな! 腹も減ってきたし」


 ダークドラゴンハンターズの面々が乗り込んだ飛行船『サンクチュアリ』は、全長128.7メートル、最大幅32.4メートル、垂直安定翼の高さ41.2メートルという、まるで都市の片隅にそびえる摩天楼を横倒しにしたかのような巨躯を誇っていた。船体重量はおよそ50トンに達し、外殻は高張力アダマン鋼(引張強さ980MPa級)とエーテル結晶複合材の二重構造で覆われており、外殻表面には層流制御フィンが規則正しく並び、空気抵抗係数(Cd値)は驚異の0.21にまで抑えられている。

 熟練の塗装士(1級)の手により魔導ステルスコーティングを施された外観はまるで大海原を滑るイルカの肌のように滑らかで、風を切る音すら消し去ってしまうようだ。

 鷹の如き空戦能力を担うメインの推進機関は三重構造を成しており、第一に蒸気タービン出力45,000馬力、第二にエーテル炉出力12,000ルーメン=魔力換算で約8,600MWマナワット、第三にダークウィング推進システムであり、これは夜間の魔力を収束した黒色の羽根状フィンが周囲の闇粒子を吸収し、推進力へと転換する仕組みである。

 昼は太陽光を媒介とする聖なる光子を炉心に取り込み、夜は闇の力を凝縮する――  

 それはまさしく、昼夜の変遷そのものをエネルギー源に変える、宇宙的な呼吸を繰り返す巨獣。燃費もすごくいい。

 航続距離は200km、最大巡航速度は時速480km、ダークブースト航行時には時速720kmに達し、積載量は兵士120名+装備及び貨物、総重量350トンを余裕で収容可能であり、船内区画は居住区、兵装庫、記憶の間、そして総合的な操縦を行う管制室に分かれている。特に「記憶の間」は、過去の戦闘データを”魔導演算子(Runic Processor)”として記録、保存し、船そのものが経験を学習する機能を有している。


 その鋼鉄の巨体は知性を持ち、過去を反芻しながら未来を予測することにより、恐るべき戦闘反応力を引き出すのだ。

 経歴もまた特筆されるものがある。この機体の初代設計者は、実は王国に背いた裏切り者であり、処刑直前に秘密裏に残した設計図が息子に受け継がれた。その息子は継承を呪詛のように受け止め、いやいや構築を試みたが、完成直後に何者かによる破壊工作で失敗したのち、その残骸が再び回収されて更に息子の手に渡った。三代に渡り船に人生を捧げた血筋は、船体の隅々に至るまで刻み込まれているという。

 この飛行船は単なる兵器ではなく、一族の歴史と王国の裏切りの記憶を背負った存在であり、乗り込む者はその重みを否応なく感じ取ることになるとされている。


 サンクチュアリはマハトの手に渡るまでに、複数の組織や所有者によって外観の色から内装のソファの素材、キッチンの水回りに至るまで、改造できそうなとこはもうとにかく手当たり次第に改造を施されてきた。更に改造費の調達の為に様々な企業団体とスポンサー契約を結び、機体にはF1カーなみに企業ロゴのステッカーがべったべたと張られ、見た目はだいぶ無残な有様になったという。その最もたる要因は、最大の出資者が成人向け雑誌の出版元であり、なんかこう、どぎつい雑誌名が機体の正面にでかでかと載る形になってしまったことで、まあ、人妻とか堕ちとかそういう穏やかでないピンク色の文言がですね。街中を飛んでるところを母子連れに見られた日にはもうそりゃ気まずいのなんの。「ままー、あの船の名前なんて読m」「タカシあんなもん見ちゃいけません!」


 ありとあらゆる苦情とそしりに耐えながらも、〇〇は『七つの陸と海と月で最強』の飛行船とするべく、既に国軍保有の戦艦も裸足で逃げ出すほどの性能であったこの船に、トドメとなる魔改造を行った。いいや、魔改造を超える改造……今すぐに思いつけるのは鬼かな。鬼改造だった。その結果、ダークウィング全開! ダークブーストモード発動! と叫んだら結構な速度が出るようになったとされるが、試してみても実際はそうなんなかったので、マハトは改造業者を詐欺として告発し、一審では勝訴したものの、控訴を受けて現在は高裁で争っている。


―――――


 急にどうしたこいつ。


 会話ばかりなのはダメだろとは言ったけども、なにこの唐突な設定の過剰積載。

 設定過多はマジでやめろ。ほんとマジで。

 あと最後のほう、様子がおかしいぞ。

 いやね、本当に駄目だと思うこれ。これマジで読者離れるから。

 

 

 いやそれ自体が絶対ダメだとは言わないよ? でも物語自体はその間ずっと止まっちゃうんだよね。

 あのさあ、こっちは真面目に読んでんだよ。その設定の中に何かしら物語の欠片が散りばめられてると信じたいわけ。フツーはそういう風に作るわけ!

 やるなら、ちゃんと登場人物に紐づくようにしてキャラクターや世界観の補完として機能させてほしいわけ! 具体的な数字出したいへきは理解できなくもないけど、その数字にちゃんと根拠はあるかい? いっそ比喩重視の方がまだイメージ伝わらない? キャラクター自身が説明する時に数字を多用するみたいな感じなら、まだキャラのイメージに貢献しないか? そここそ台詞のほうがよくない?


 あと名前、サンクチュアリって……海外のSF的な作品に出て来る宇宙船の名前がたいてい「サンクチュアリ」になりがちってのに則ってんのかな?


 この設定ってあとになって役に立つんですか?


 ”チェーホフの銃”って言葉があってだね。

 「第一幕で壁に銃がかけてあったのなら、それは後で必ず使われられなければならない」みたいな原則のことを言うのだけども。

 少なくとも印象に残るギミックやオブジェクトを出すのであればそれはあとできっと意味を成すもんと思っちゃうんだよ。逆に言えば前段で出てきていない要素で物語を展開させるのは好ましくないみたいな……まあこれも絶対そうじゃなきゃいけないってこたないけどー。まあいっかーもう。


 いやそれよりもお前さ。

 〇〇……〇〇!? 〇〇〇〇か!!


 てめえ、これ〇〇〇〇〇〇の、〇〇〇〇〇〇号のWIKIをパクりやがっただろ!!


 名前の改変漏れてるやんけ!

 だーめだってこれは!(※)


 ※本当にダメなので本文の一部を差し替え、固有名詞を伏せる形とさせていただきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る