第11話 美由里
片付けを始めて1週間。美由里から電話がかかってきた。
「もしもし?お久。でもないか…。聖落ち込んでいるかと思って電話してみた」
「犯人は美由里だね?私のアパートの住所教えたの。鎌田さん突然来て大変だったんだよ」
「ごめん、ごめん。いや、なんか住所教えて欲しいって言われて…。でもまさか突然行くなんて、思っても見なかったからさ。」
「まあ、私も驚いたけど、鎌田さんの方がドン引きして驚いて帰ってしまったけど…。私もさ、あまりの汚さなんだなって思って、ここ何日か片付けし始めてたよ」
「えー!聖が片付けてるの?大丈夫?」
「うん。少しずつだけどね。だってさ、鎌田さんに悪いことしちゃったし、あの後地震あったじゃん。ゴミが上から落ちてきて、私このまま埋れて死ぬの嫌だなって思ったんだ」
「そっか。ある意味鎌田さんのお陰だね。聖が改心したのは。」
「でもさすがにショックだったよ。鎌田さん、ひどい顔して帰って行ったもん。せっかく彼氏が出来ると思ってたのに…。ところで美由里はその後何か進展あったの?」
「うん、私もね外崎さんと電話のやり取りを少ししたんだけど、なんか違うなって思って、今は振り出しに戻る。になったよ」
ピンポーン!
「あ、誰か来たみたい。また後でね」
「うん」
ベルの音が鳴り、聖は恐る恐る玄関のドアを開けた。もちろんチェーンをかけて…。
「どなた…ですか?」
「私以外、あと誰が来るのよ」
そこには今電話を切ったばかりの、美由里が立っていた。
「美由里!また、びっくりするじゃない!」
「ごめん、鎌田さんの件で落ち込んでいるかと思ってさ」
「わぁぁぁぁ…」
私は思わず泣きながら美由里に抱きついた。
「泣いていいよ。泣け泣け」
「うん、うん」
美由里はしばらく黙って、私を泣かせてくれた。
中に入ると
「へぇ、頑張ってるじゃん。もうすぐ床見えそうだよ」
「うん。鎌田さんに会ってからこのままじゃマズイと思って、ここまで頑張ったんだ。」
「ほら、お土産持って来たからさ。一緒に食べよ」
美由里が持ってきたお土産は、あの日鎌田さんが持って来てくれた、イチゴのショートケーキと同じものだった。
私は一瞬、げっ!と思ったが、あの時のは食べられなかったから、今度は美由里となら一緒に食べれると思った。
食器棚からケーキ皿とフォークを手に取り、テーブルに運んだ。
「すごい!聖が食器棚からお皿出す日が来るなんて!」
「えへへ、キッチン周りは少しキレイになったでしょ?」
「なったなった。見違えるようだよ」
「うん、飲み物、牛乳しかないけど、いい?」
「なんかケーキに合わないけど、いいよ」
コップも食器棚から取り出した。
「へぇー、コップも洗ってある!やれば出来るじゃん。すごい進歩だよ」
「ありがとう、美由里」
「まあ、男なんてさいっぱいいるんだから。また合コンあったら誘うよ」
「当分はいいかな。部屋の片付けをしたいんだ」
「片付けすると気持ちまで変わるもんだねぇ」
「じゃ、遠慮なく。Gに見付かる前に食べちゃお!」
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