第12話 各々の現場
だいぶ片付けも進み、久しぶりの床の見える範囲も大きくなった。
玄関周りとお風呂場とトイレは、殆ど燃えるゴミとペットボトル、靴バック類で比較的片付けやすかった。
燃えるゴミの袋は集積所に持って行き、靴は仕分けして履かなくなったものは処分し、まだ履けるものは下駄箱に入れた。
その中にはもちろん、お気に入りの黒のスニーカーも、居場所を見つけきちんと収まっている。
バックはとりあえず部屋のクローゼットの近くに運んだ。
そして今日は最大イベントのお風呂とトイレ掃除、あと、クローゼットの仕分けをする予定だ。
幸い歩いて10分の場所に、ホームセンターがある。
私は開店と同時にお店の中に入った。
まずは赤と黒の太めのマジック、ガムテープ、歯磨き粉3個、泡ハイター、キッチンペーパー、ゴム手袋、マスク、雑巾、大きめのダンボール箱3個。
会計は3500円近くだった。
ダンボールはビニールテープでくくってもらい、プラスチックの取っ手を付けてもらった。
さて、たかが10分と言えど、これらの荷物を持って歩くのは非常に大変だった。5回休憩を挟んでの運び作業。行き交う車の人たちに指を指されたり、ジロジロと物珍しそうに見ていく人もいた。
私は少し、いや、かなり恥ずかしかったけれど、みんなあかの他人だし、もう二度と会うこともあるまい。そう自分に言い聞かせ、ヒーヒー言いながら、アパートへ運んだ。
幸い私の部屋は1階の角部屋だ。これは助かった。
✤✤✤
アパートに買い物の荷物を置き、早速お風呂掃除にかかる。本当は一度休憩をしたかったが、座ってしまうと体は動くのをやめたがる。
仕方なく買ってきたばかりのゴム手袋をはめ、マスクを着用し、歯磨き粉と雑巾を手に取り、お風呂場へ侵入。
まずはヘドロをシャワーで流した。
歯磨き粉を多目に雑巾に付け、浴槽を磨いた。
なぜ、歯磨き粉?と思う人もいるかもしれないが、歯磨き粉は万能掃除道具の1つで、細かい粒子が入っているから、傷付けずにあちこち磨ける。
と、母親から昔教わった。
雑巾で磨いた後はお風呂場中、歯磨き粉の臭いが漂っている。口の中までキュッキュッとなりそうだ。
そして泡ハイターとキッチンペーパーを取り、シャワーヘッドや壁に泡ハイターを付ける。その上からキッチンペーパーを付け、泡ハイターがより浸透するようにした。
(私って実はキレイ好きだったのかも…)
お風呂場はみるみるうちにピカピカになった。
同じ要領で、トイレも磨いた。便器の尿石は全部取り切れなかったが、だいぶキレイになった。床は家にあったいつかのマジッククリーンで2度拭きをする。
トイレもキレイになり、用を足すのが楽しみになった。
ベタベタになったキッチンペーパーと、トイレを拭きあげた雑巾をゴミ袋に入れ、ゴム手袋を外した。
次はクローゼットだ。ここでダンボールの登場。
ダンボールの底をガムテープでビーっと貼り付けた。
クローゼットの中は季節ものの服や、バック、本、小物類でギッチリ!
扉が閉まらず外にはみ出している。
先に物を全部出してみた。
(むむむっ!なかなかのすごい量だ…)
先に本を仕分けして、もう当分読まないであろう本を、ダンボール箱の中に入れた。表紙がよれていたり、帯が破れていたり、これは小説家として失格だと思った。
あっという間にダンボール一箱になり、上をガムテープで止めた。そしてそれをズルズル押しながら、玄関近くに運んだ。
次はバック。形の崩れたもの、古い型のもの。これらは金具の部分を出来るだけハサミで切り取り、燃えるゴミの袋に入れた。
百均が好きでいつか使うかも…と思い集めたグッズも、燃えるゴミ行きとなった。
アルバムも出てきた。懐かしいなぁと思いペラペラめくる。
おっといかん!またもや危うく、魔の手に引かれてしまうところだった。
写真を見始めるとキリがない。
上京する時に寂しく無いようにと、小学生から高校生までのアルバムを、持って来ていた。
幼なじみや、元カレ、仲良しグループ、運動会などなど沢山ある。よくもまあこれだけ持って来たもんだ。
一人暮らしを始めて早15年。上京仕立ては泣きながら写真を見てはいたけれど、今ではぐちゃぐちゃのものや、色あせたもの、アルバムに入り切らない写真たちがくっついて剥がれにくくなっている。
また1つダンボール箱を持ち、底をガムテープで貼り、アルバムを入れた。
その他の色あせたものや、ぐちゃぐちゃの写真たちは、燃えるゴミの袋に入れた。
手がホコリまみれになってきた。
私は一度キッキンで手を洗う。そこにはタオルハンガーにかけてある、手拭き用のタオルもあった。
私はあれから(どれから?)食器はマメに片付けていたから、流しには生ゴミ入れの袋しか出ていない。
手をタオルで拭いたあと、またクローゼットの分別開始!
アルバムを入れたダンボール箱には、まだ少し余裕があった。
クローゼットの中にあったもので、捨てるには惜しいグッズをアルバムのダンボール箱に入れ、ガムテープで上を止めた。
これをまたズズズーッと玄関まで、押して運んだ。
クローゼットの中はすっかりキレイになった。
そして床を新しい雑巾で拭いた。
次に隣の6畳の和室。こっちの部屋は殆ど使っていない。だからゴミを置くにも最適だった。
とにかく分別してゴミ袋に詰めた。
こっちの部屋には以前片付けようとして挫折したゴミ袋と、コンビニ弁当のゴミが主にある。
定位置の部屋よりは比較的物は少ない(と思う)。
可動範囲を少なくしていたから、和室のゴミは差程多くなく、足の踏み場を確保するには楽な方だった。
すると、通帳発見!無くした印鑑と一緒に袋に入って出てきた。
その後も封筒に入ったままの現金や、懐かしのCDなどが出てきた。
(このCDももう聞かないろうな)
感傷に浸ることなく、すぐ様袋に入れた。
押し入れは閉めっぱなしで、いつか使うかもしれないと思っていた紙袋や、無くしたと思っていた文房具類、メイクグッズ、溜め込んだトイレットペーパー、缶詰、レトルト食品などが出てきた。
(こんなところに化粧品置いてたんだ。使わないから押し込めたんだな)
ファンデーションは中身が割れてボロボロ。他にもアイシャドウやチーク、口紅も出てきたが、一体いつ使ったのか分からない代物だった。もちろんこれらも燃えるゴミの袋に入れた。
缶詰やレトルト食品ももうとうの昔に賞味期限が切れていた。
あと、大物は洋服だけになった。
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