第9話 開始
私は数日間何も手につかず、いつもの定位置で天井を見ながら、ぼーっとする日々が続いた。
周りを見るとゴミゴミゴミ…。
私の部屋は2DK。洋室と和室とある。始めは確かペットボトル1本からだった。
飲み終えたペットボトルをすすすーっと、テーブルの上に置いた。
2本、3本と続くうち、テーブルが手狭になり、えいっ!とペットボトルを後ろに投げた。
キッチンの流し台には洗わずに溜め込んだ食器や、鍋、フライパンがある。
始めのうちは自炊をしていた。料理を作り、食べ終わると満足し、定位置で眠るようになった。
お風呂もちゃんと入っていた。が、だんだんゴミが広がっていくうちに、入れる場所が無くなり、お風呂場に持って行った。あっという間にゴミだらけになってしまった。
それから近くに銭湯があり、入りたくなったら銭湯に行っていた。だが、毎日では無い。
かろうじてトイレは足元だけゴミがある。用を足す時に困るから、トイレは比較的キレイな方(?)だと思っている。
ベット周りも洋服だらけになった。
洗濯が面倒くさくて、あまりしていない。だから服を着る時は臭いチェックをして、あまりシワシワじゃないものを選んで着ている。
いつの間にかクローゼットもその前も、テレビ周りもカーテンのとこも、隣の和室も全部、全部ゴミだらけになった。
私は執筆活動だから、部屋が汚れていても差程苦にはならない。テーブルといつもの定位置さえ何も無ければ、暮らしていける。そう、思っていた。
が、気が付けば35才。ノミネート1度取ったきり、ゴーストライターの生活。本当にこれでいいのだろうか。このままこの部屋に埋れて、一生彼氏も出来ず、1人ぼっちで暮らしていくのだろうか…。
鎌田さんと連絡が途絶えてから、少しずつそんな考えが出てきた。
そして一念発起し、財布を手に握り、私は外へ出た。
大量の燃えるゴミ、プラスチック、燃えないゴミの分別の袋と、ハサミとカッターを買って来た。
私の中で何か燃え上がるものがフツフツとしていた。
まずはキッチンをキレイにしようと思った。今までは多少汚れていても大丈夫と思い、コップを使い回ししていた。が、あまりにも汚すぎて、牛乳もジュースもラッパ飲みするようになっていた。これじゃあ、女子力が下がってしまう。
私は洋服の溜まり場から、もう着ないだろうと思われるカットソーを取り出した。そしてハサミでジョキジョキと切っていった。
1部を流しの横に置き、洗い終わったグラスや食器を、切り取った洋服の上に置く。水切りカゴ変わりだ。
そこはすぐにいっぱいになる。
今度はまた別の切り取りの服を濡らし、食器棚をキレイに吹いた。
最後に残った部分で、水切りし終わった食器を拭き、食器棚にしまっていく。
この作業を数回繰り返した。
2時間程かかり、ようやく食器や鍋、フライパンは在るべき場所へ帰っていった。
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