第4話 大雑把PART II。

「ただいまー。マジで遅くなった! ゴメンなー?」

「んーん、お疲れさま!」

 玄関のドアを開けた太一を咲良は笑顔で迎えた。

「男の一人暮らし部屋だからアレだけど、少しはゆっくりできた?」

「ゼンゼン! だって太一ズボラすぎ!」

「ええ? む? って事は、まさか……」

 太一が咲良を通り過ぎて居間への戸を開ける。

「うわぁ、そうきたか!」

「何よ? 文句ある?」

「文句はねーけどさ、人の部屋あんまりいじくるなよ」

「あんただってするじゃん」

「いや、俺は咲良が困らなそうなやつだけを——」

「全然困ってたから!」

「ぐっ。と、とにかく。今度来た時はテーブルの上のもんには触らないで」

「なんでよ?」

だったんだよアレは!」

「は? 完璧な配置?」

「テーブルの上にはすぐに使いそうなやつを置いてんだよ。ああ! スマホケーブルどこやった?」

「アッチの押し入れ」

 太一は寝室に入り押し入れを開けた。

「ケーブルっていうか、全部じゃん!」

 押し入れにあったのは、大きな透明のビニール袋に入れられた物達。箱やら何やら酒瓶までもが、ごっちゃになっている——だ。

「だってー? 何が要るものでー? 何が要らないものかー? わかんないしー? あは?」

「『あは?』じゃねーから! 全部要る!」

「じゃあ良いじゃん」

「良くない!」

「良くないのー?」

「こんなんじゃ何がなんだかわかんないだろ! あ! てか服も入ってる!?」

「ああ、ソレも出しっぱだったから」

「ワザとだよ! もうちょっと暖かくなってから着ようと出しておいたのに! また洗わなきゃならねえ!」

 咲良もまた、大雑把な女、だった。

「うるさいなー」

「いや、ええ……? 何その態度……?」

「文句ある?」

「いえ、ないです」

 咲良は堂々としている。

 部屋を散らかしていたという事実がある以上、強気に出られるのは、咲良の方だった。

 ——やっぱり私、甘えている。

 ありのままの自分で居させてくれる、ありのままに自分に接してくれる、そんな太一に、咲良は密かに感謝した。



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