第2話 大雑把。

「ただいまー。なんか手紙とか来たりした?」

「ううん、来てないよ? まだ朝だし」

「ふーん。……ねえあんた、また余計なことしてないよね?」

「余計な事はしていない。必要な事だけやった」

「ええ!? 何したの!? だからあんた家に呼ぶの嫌なのよ!」

「じゃあ呼ぶな」

「まじでそう思うわ。もう呼ばない」

「いや、やっぱ待って? 今回は全然余計な事してないから! ね! ね?」

 前回ここに来た太一は、シンクに溜まっていた食器を洗った。そこまでは良かった。

 問題は、水切りかごへの仕舞い方である。

 皿などを立てる窪みや仕切りがあるにも関わらず、太一は食器達をかごの中で重ねたのだ。である。

 太一は、大雑把な男、だった。

「今日はいったい、何したの?」

「え? それは——」

 洗面所から、ごうんごうん、と音がする。

「もしかして——」

 咲良は洗面所に早足で向かう。

「ああ! やっぱり!」

 洗濯かごが二つとも、からになっていた。

「へへへ」

「へへへ、じゃねーから! まさか私の下着とか慶の服とか一緒に洗ったの?」

「うん、ゼンブこの中」

「うわぁ。……良い? ものごとには順番があるの。先ずは綺麗な私の服を、この良い香りがする洗剤で洗う——」

 洗面台下の収納を開いて咲良が言う。

「次に慶の服。最近泥だらけだからあの子のはこのジェルのやつで洗う」

「うわ細けえ」

「うるさい! その次が私の下着! その後が慶の下着! なんで全部ごちゃ混ぜにするの? しかも量が多すぎて洗濯機から変な音が出てるじゃない!」

 やがて洗濯機が止まり、中を見る。

 あらゆる衣類が複雑に絡み合い、だった。

「てへへ」

「笑うな!」

「あ、実は——」

「まだ何かしたの!?」


 尚も咲良の説教は続く————。

 

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