第94話 先の読めない話

 ウチの奥さんは本を読まない。わたしが本を読もうが、小説を書こうが、ほとんど興味を示さない。

 曰く、「おもしろくないんだもん」。だそうである。


 エンタメ至上主義の彼女が愛するのは、兵庫県の誇る地方TV局サンテレビが放送する中国ドラマ、韓国ドラマだ。中国ドラマは「衣装やセットにお金がかかっていて豪華。女優さんもみんな綺麗」ところが気に入っており、韓国ドラマは「日本のドラマと違って、先の読めない展開が多くおもしろい」らしい。


 奥さんは、旅行先を選ぶときも「何度も同じところに行きたくない」と言う。どうも彼女は、過去に経験したことのない新鮮な体験を楽しいとか、おもしろいとか感じるようだ。ということはもちろん、サプライズなイベントやプレゼントは大好物である。これに対して、多くのドラマや小説は「先が読めてしまうからおもしろくない」という。


 ――途中まで見たらラストの予想がついたわ。


 特に、日本のテレビ局の作るドラマには辛辣な評価を下す傾向がある。わたしはTVドラマを見ないので分からないのだが、日本のドラマの脚本は以前より劣化しているのかもしれない。



『ばにらさま』(山本文緒 文春文庫)


 透明感のある女性のイラストにひとめぼれしてジャケ買いした文庫本ですが、これがめちゃくちゃおもしろかった。短編集なのですが、一編一編の構成が「うーん」とうなってしまう巧妙さです。構成が良いことと、良い小説であることは関係がありませんが、この短編集は構成も内容も素晴らしい小説だと思います。


 これならと思って読むことを勧めたら、奥さんも「めちゃ、おもしろい」と喜んで読んでいました。ウチの奥さんが認めたからには本物のエンタメだぞと思っていたら、山本文緒さんは直木賞作家だったんですね。知りませんでした。


 『ばにらさま』がおもしろかったので、直木賞受賞作『プラナリア』も読んでみました。うーん。めちゃくちゃ上手かったです。さすが直木賞作家とその筆力に感心しました。特に女性の描き方が残酷なまでに鋭くて魅力的。女性におすすめしたい。


 いや~、女性にはいい作家が多いです。

 男性作家で、山本さんくらい書ける人いませんかね~。

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