第93話 男はつらいよ

『男はつらいよ』は、1969年に第1作が公開された松竹配給の映画で、同じ俳優を主演に48作が制作された大ヒットシリーズ。


 ――ワタクシ、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、姓は車、名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します――


 昭和世代にとっては、お正月映画としておなじみだった『男はつらいよ』は、渥美清扮する寅さんが巻き起こすドタバタを笑うコメディ映画でした。


 でも、第1作が公開してされた頃に生まれたわたしにとって、「寅さん映画」は、映画がまだ娯楽の王様だった頃を引きずった「過去の遺物」であり、「ダサくて観ていられない映画」の筆頭に上がるものでした。96年に渥美清が亡くなった後も、ほとんど見たことがありません。


 しかし――、あの頃若者だったわたしもおじさんとなってしまい、なんとなく『男はつらいよ』の良さが分かるようになってきたのです。なにが分かるのかって? そりゃ、タイトルです。男ってものは色々とつらいのです。



 11月19日は「国際男性デー」だと、今朝のネットニュースで知りました。ふーん。女性の日があるのは、なんとなく知ってましたが、男性の日があるとはね……。男性のジェンダー差別について考える日なんでしょうか。


 思えば「女性差別」という言葉はよく聞きますが、「男性差別」はあまり聞く言葉ではありません。男性が男性であるが故に受ける差別というものの認知度は低いのでしょう。


>世界的に11月19日を男性の側からジェンダー平等を促す「国際男性デー」とする動きが広がるなか、働く男性の半数以上が「男性であるがゆえの困難」を職場で経験していることが分かりました。(テレ朝NEWS)


 自殺者に占める男女の割合は、男性が約67%で女性が約33%です(気になったので、警察庁のホームページで調べてみました)。差別があるから自殺する、なんてことをいうつもりはありませんが、男性が女性にはない困難を抱え、自らの命を断つことが多いのではないかと考えさせる数字ではないでしょうかね。


 先に、女性差別という言葉について書きましたが、女性作家が女性の不自由さを描いた小説ってあるじゃないですか(わたしは、いままさにそういう小説を読んでいるのですが)。女性読者の共感を呼んで、そういう作品は読まれるんでしょう。


 でも、男性作家が男性であることの困難を描いた小説って、知らないんです。そういうのあるんでしょうか? わたしは読んでみたい(書いてもみたい)のですが、一般的な男性読者はそんなの興味ないんでしょうかね。


 それとも、男性であることの困難を感じること自体が女々しいとして忌避されるんでしょうか。どうもそんな気がしますが、もしそうであるなら、「男性であることの困難」は更に潜在化していって、日の目を見ない怨念となっていきそうな気がするのですが――。


 こんなこと書いて、わたしって女々しいですかね?

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