第78話 驕れる人も久しからず

 祇園精舎ぎおんしょうじゃの鐘のこえ諸行無常しょぎょうむじょうひびきあり。

 沙羅双樹さらそうじゅの花の色、盛者必衰じょうしゃひっすいことわりをあらはす。


 おごれる人も久しからず、唯春ただはるの夢のごとし。

 たけき者もつひには滅びぬ、ひとえに風の前のちりに同じ。



 小学5年生の息子が、国語の宿題で古文を朗読していることに驚きました。イマドキの小学校では、古文を読むんですね。むかしは中学校で読んだような気がするのですが……。いまの子は、勉強が大変ですね。授業でいろいろ詰め込まれて。


 平家物語も読んでました。


「ぎおんしょうじゃのかねのこえ しょぎょうむじょうのひびきあり」


 意味も分からず、つっかえつっかえでですが。


 諸行無常なんて子どもに分かるのかなあ。分からないでしょ。

 わたしのように50年も生きてると、なんとなく分かってきますけどねえ。思えば、いろんなものが移り変わっていきました。


「さらそうじゅのはなのいろ じょうしゃひっすいのことわりをあらわす」


 盛者必衰。

 驕れる人も久しからず。


 まさにそのとおりで、アイドルにしろ、俳優にしろ、メディアに出ずっぱりの大人気……という期間は長くとも10年から20年くらい。どんな大スターであっても、その人気はやがて下火になってゆき、いつのまにかメディアから消えてゆくのです。


 小説家というのもそうで、売れっ子作家もいつまでも売れっ子でいられるわけではありません。だんだんと著作が書店の本棚から消えゆき、やがて小説家としては忘れられるのです。


 最近、あの作家さんの新刊見ないなあ。


 年齢を重ねると、本屋さんを歩いていてそう感じることが増えていきます。新しい作家さんに興味が向かないんですね。いつの間にか書店には、名前の知らない作家さんの本ばかりが並ぶようになるのかもしれません。


 ああ、諸行は無常なのですね。。。

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