第49話 創作むかしばなし④

 7日は金曜ロードショーで『風の谷のナウシカ』をやっていました。ほとんどテレビは見ないのですが、ビデオに録画されていたのです。朝から5年生になる息子がじーっと見ていました。


「ナウシカ観たことあるの?」

「ない」

「おもしろい?」

「……フツウ」


 息子にとっては、おもしろいと思えるようなアニメではなかったようです。



 わたしがはじめて『風の谷のナウシカ』を観たのは、高校1年生の夏休みのことでした。その年、8月に宮崎駿監督の最新作『天空の城ラピュタ』の公開が迫っていて、その宣伝も兼ねてのテレビ放送だったのだと思います。


 その放送を見たわたしは「ナウシカ」に衝撃を受けてしまって……。その後、数日間は放心状態で自分が何してたかよく覚えていません。


『風の谷のナウシカ』は、1984年に公開された宮崎さんの同名漫画を原作としたアニメーション映画。宮崎駿監督の長編アニメーション映画第2作です。内容はSFアクションで、ジャンルとしては「巨大産業文明が崩壊してから千年後」という核戦争で世界が滅びた後の時代を彷彿させる、いわゆる「ポストアポカリプスもの」に当たるでしょう。


 古代兵器を地下から「発掘」した人は、1000年前、自分たちの愚かな行為で世界が滅びかけたことも忘れ、また、争いはじめようとする。それを「風の谷」という小さな国の少女ナウシカがたったひとりで押し止めようとする物語です。


 「ナウシカ」はいいアニメだと思うんですが、いちばん良いアニメというわけではない。わたしが衝撃を受けたのは、たぶん巡り合わせなんだと思うんです。15歳で出会ったからだと思う。3年早く生まれていたら、3年遅く生まれていたら、わたしは「ナウシカ」に衝撃を受けることはなかったでしょう。


 『天空の城ラピュタ』は、1986年にスタジオジブリが初めて製作した長編アニメーション映画です。これも監督は宮崎駿さん。空を飛ぶ古代文明の遺跡、ラピュタに眠る「飛行石」を手に入れようする軍隊と海賊の争いを背景に、少年パズーが飛行石の秘密を知る少女シータを軍隊から救い出そうとする物語。


 この「ナウシカ」と「ラピュタ」ふたつのアニメ映画が、わたしが小説を書くきっかけになりました。


 じつは『天空の城ラピュタ』には、小説版がありました。……というか、いまでも大きな本屋さんなら置いてあると思います。

 「小説 天空の城ラピュタ前編・後編」(亀岡修・宮崎駿 アニメージュ文庫)

 わたし、映画の公開当時、買って読んだんですけどまったく納得がいかなくて。


 この程度の文章で本になるなら、おれでも書ける――と。不遜ですねえ(笑


 うろ覚えですが、亀岡修さんは編集者さんですよね。作家さんではない。どうして編集者さんが映画のノベライズを担当したのかは大人の事情があるのでしょう。本業じゃないので、わたしには文章が固く感じられたのです。


 この「小説版・ラピュタ」をきっかけに書きはじめた小説が「ナウシカ」の二次創作でした。二次創作――当時はそんな言葉知りませんでしたが、やってたことはそうです。主人公が「風の谷」に転生(コールドスリープから目覚める)するという設定の二次創作でした。


 いまでは距離を置いて眺めていますが、Webで「異世界転生モノ」や「アニメの二次創作」を執筆する人の気持ちは手に取るようにわかるつもりです(笑


(つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る