第46話 創作むかしばなし

 カクヨム作家さんのエッセイをあちこちとつまみ読みしていると、なんですかTwitterの調子が悪いらしいですね。イーロン・マスクが閲覧制限をかけているんですか?(このへん知識不足)わたしはアカウントはあるものの、休眠状態なのでよく分かっていないのですが……。


 いったいどういうことがあったんですかね? IT弱者である藤光に説明してくれる人いないでしょうか。


 なんかねー、このイーロン・マスクという人、嫌い。Twitterを買収してから彼の名をよく聞くようになりましたが、自分の思いついたことを突然ズバズバと実行していくスタイルが好きになれません。


 新しいことを始めようとしたときに、こういう他人との調整をすっ飛ばして自分の意見を押し通すタイプの人の方がスピーディーに事が進むのは理解できます。が、こうした物事の取り組み姿勢は軋轢が大きく、この人のおかげで残念な思いをする人も、そうでない人に比べて多いと感じます。


 効果も副作用も大きなことをドカンとやるより、効果は少なくとも副作用の小さいことをたくさん積み上げてゴールに辿り着く、そんな手法をとる人が評価されるような時代になってほしいです。



 さて、前回の続きです。


 80年代は、余裕があって太平楽が許される時代だったというようなことを書きました。そんな中、わたしはぼやあとした中学生活を送っていました。プロになった作家さんの経歴とか読むと、中学生の頃から小説を書いていたとか書かれていたりしますが、わたしにはまったくそうしたことはありませんでした。


 長時間テレビを見ることは許されていなかったので、二週間に一度、通っていた図書館でミステリやSFを借りて、暇な時間に読むくらいがわたしと小説との距離感でした。積極的に小説を読みたかったわけでもなかったと思います。


 高校受験を間近に控えた中学三年の三学期にわたしとそれとは出会いました。ゲームブックです。ゲームブックとは(わたしのエッセイにはときどき出てくるので、説明しなくてもいいかもしれませんが)――


 ゲームブック (Gamebook) は、読者の選択によってストーリーの展開と結末が変わるように作られ、ゲームとして遊ばれることを目的としている本である。(Wikipediaより抜粋)


 ――というモノで、80年代中頃から終わり頃にかけ、中高生を中心に大ブームとなった物語の形式です。クラスの同級生が教室でこのゲームブックを読んでいたのです。


「なにそれ?」

「ゲームブックだよ」

「??」


 ゲームブックは、本文が数十から数百のパラグラフに分割されて書かれています。各パラグラフの最後には、次に読み進めるべき複数のパラグラフ番号が記載されています。読者は自分の意思で番号を選択し、そこで分岐した物語を読み進めることになります。


 例えば、ある建物のなかを探検しているときに……


 廊下、左手に見えるドアを開けて部屋に入る ――86へ進む

 廊下をまっすぐ進んで右に曲がる      ――142へ進む


 違うパラグラフでは、それぞれ異なった物語展開が用意されており、読者は物語に入り込んで、あたかも物語の主人公のように「自分の物語」を本のなかに見つけることができる。これがゲームブックのおもしろさの肝でした。こう書くとなんだか、「創作」に結びつきそうですよね。そう。ゲームブックブームとわたしが創作するようになったことは、無関係じゃないように感じます。


「すごくおもしろそうだね。貸して」


 受験勉強を舐めきっていたわたしは、同級生からゲームブックを借りて帰り、帰り道で読み、自分の机で読み、部屋のこたつの中でまだ読んでいたのでした。


 物語の展開を読者が決めることができる。

 とはいってもサイコロの目に運命が左右される要素もある。

 結果、読者が望ましいと考える結末(ハッピーエンド)に至るまで何度も読む。


という風にのめり込んで読みました。


 わたしが同級生から借りたのは『君はエスパー』(スーパー頭脳集団アイデアファクトリー/桐原書店)というゲームブック。この本が、わたしの「本が好き。小説が好き」というスイッチを入れたような気がします。 


(つづく)

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