第4話 野球の国

 三日ほど、仕事に至急の用件が入っててんてこ舞いしていました。今夜は夜どおしで仕事です。ただ、ずっとそこにいなければならないけど、することは大してないという仕事なので、ヒマ時間はエッセイを書くことにします。


 さて、野球のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本が優勝しましたね。見ましたか? WBCをサッカーのワールドカップと同列に扱うことはできませんが、かなり盛り上がりましたね。


 クライマックスは最終回。九回の表、1点リードしていて逃げ切りたい日本は、マウンドに大谷翔平を送り出します。二刀流でメジャーリーグのMVPに上り詰めた野球界のスーパースターですよね。ツーアウトを取って最後のバッターへの投球は凄まじいまでの気迫でした。三振をとったスライダーは素晴らしい球で――あれはだれも打てないでしょう。


 本来、先発型のダルビッシュや大谷を決勝戦の中継ぎや抑えのポジションで使う栗山監督の選手起用は「プロ野球」というより「高校野球」的で賛否あると思いますが、今回のWBCでは見事に結果を出しましたね。大谷が優勝投手となった場面などは「野球マンガ」の最終回のようにドラマチックでした。


 WBCはサッカーのワールドカップと違って、各国のベストナインがメンバーに選ばれているわけではありません。メジャーリーグでは、一流選手をWBCに参加させることに消極的なチームが多いからです。過去には当時ヤンキースにいた松井秀喜選手がWBC不参加を表明したり、各国にベストメンバーでWBCを戦えないジレンマがありました。


 もっともジレンマの大きい国が「ベースボールの国」アメリカで、WBCではベストメンバーを組めた試しがありません。今回は野手にかなり良いメンバーが集まったと言われていますが、ピッチャーに関してはもっと実績のある選手が不参加だったようです。


 アメリカではメジャーリーグの力が強く、WBCはメジャーリーグ開幕の前座興行と位置付けられているようです。そのため、ベースボール発祥の国であり、最高の野球選手が集まる国のはずが、WBCで優勝したの過去に一度だけです。


 今回のWBCもアメリカは決勝戦で日本に敗れ、優勝することができませんでした。ベストメンバーではないとしても、アメリカが日本より弱いチームだとは思えません。ただ、日本は現状集められる最高の選手たちを集めてチームを作ることができていました。なんとしてもWBCに優勝したかったからです。アメリカに足りなかったのは、それだと思います。WBCにかけるおもい――ベースボールに対する愛情といっていいかもしれない。


WBC決勝戦の結果は、もっともベースボールを愛している国はアメリカではなく、日本だったということを示しているのではないでしょうか。



 小説を書くのもちょっとこれに似ていて、素晴らしい感性や文章を書く技術をもった人が常によい小説を書くわけではないし、賞に選ばれるわけではない。


 その小説が人の心を動かすのは、それを書いた人の熱意――小説に対する思い――が強いが故にではないでしょうかね。


「小説を愛する力」かあ。そんなのが今のわたしにありますかね……。日本かアメリカか、わたしはどちらかというとアメリカタイプのような気がしますね……。

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