ぐちゃぐちゃにされちゃったの!?

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 藤本朱里は思春期まっただ中の女子高生。

 色々と多感なお年頃である彼女は、教室に持ちこんだレディースコミックを教科書でカモフラージュしながら読み込んでいた。


 今は授業中ではなく休み時間なため、どんな過ごし方をするかは各々によって異なる。そこでちょーっと大人向けの漫画を読んでいたとしてもおかしくはないのだが、朱里は割と真面目な優等生として認知されているのもあって堂々と読む事はない。


 ただ、その耳だけは……近くから聞こえてきた女子達のイイ感じな会話を聞き逃すまいとバッチリアンテナを張っていた。


「こないだね~、あたし『ぐちゃぐちゃ』にされちゃって大変だったよー」


(ぐちゃぐちゃ!?)


 思わず椅子をぶっ飛ばす勢いで立ち上がりそうになった朱里だったが、そこはグッと堪えた。ぐちゃぐちゃというワードを口にしたクラスでもトップレベルの陽キャで可愛いユミっちが、年上のちゃら男とアダルトな展開になったのを妄想してしまったからだ。


「えー、また彼氏の話?」


 ユミっちの話を掘り下げようとするセッちゃん(※ユミっちの親友でこっちも可愛い)の言葉に反応して、朱里の気持ち的には自身の耳がゾウのようにおっきくなっていく。『また彼氏の~』なんて質問は、朱里のドキドキを跳ね上げるだけだった。


(や、やっぱりユミっちってそういうことたくさんやってるのね!? それをあっさり受け止めようとするセッちゃんも中々どうして……破廉恥だわ!!)


 ココが教室でなければ、誰にも邪魔されないプライベート空間であれば、朱里は「ぐふっ、うへへへ」とクラスメイトがドン引きするように笑いながらヨダレを垂らしていたかもしれない。


「いやいや、彼氏じゃなくて。ぐちゃぐちゃにしてきたのはニーちゃんよ。知ってるでしょ、ニーちゃん」

(ま、まさかニーちゃん……って禁断の兄弟愛?! それなんてドラマなの!!)


「……ニーちゃんにぐちゃぐちゃにされたの? どんな風に?」

(セッちゃんそこまで掘り下げるの!? 躊躇なさすぎじゃない!? いいぞもっとやれ!! 私の代わりにさあ早く!!!)


「んっと、ちゅーちゅ吸ったりモミモミ揉んだり」

(おっ●い星人なのね……でもわかるわ、ユミっちは大きいから)


「カリカリしたり、カプカプしたり」

(……は、破廉恥だわ。一体どこをカリカリカプカプされたのかしら)


「こう、具合の良さそうな狭い穴? に向かってズボーズボーって何回も出入りを――」

(鬼畜!! でもソレがいいのよね! わかるわ!!!)


 そこまで聞かされてはもう朱里は我慢できそうになかった。

 いますぐ読書タイムを止めて、私も話に交ぜてもらおう。そして根ほり葉ほり赤裸々な体験談を聞かせてほしい。


 そこまで考えた朱里が本を閉じかけた、その時。


「そうこうしてる内にぐちゃぐちゃにされたのよー。『部屋』が」

「あー、わかるぅ~。猫ってそういうことするよね、可愛いけど片付けが大変だぁ」


 二人の会話からニーちゃんが何なのかを察した朱里は机に突っ伏し、己が思考が最も破廉恥だった事実に人知れず大ダメージを受けた。


(ぐ、ぐちゃぐちゃにされたわ)


 そうなってしまった朱里の情緒が回復するまでは、大分時間がかかりそうである。

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