第19話 王子様来訪 後編



「我はジークフリート・アレス・ローリア。この国の第二王子である。」



何故こんなことになってしまったのか……。

何故一国の王子が少し自然の多い田舎町まできているのか……。

何故俺の家にいるのか……。


そうこれは数日前のことだ。

両親の友人である、イザーク・ヴィンセントが我が父ペヤードをこの家まで運んできた。

そこまでは良かった。


父の仕事の同僚(悪魔)と知り合いになっただけなのだから……。


しかしイザークは「思い出した。」と軽いテンションで「数日後に王子様来るから〜」的なことを言い残し去っていったのだ。


イザークが去って日が昇ると同時に村に通達が届いた。

そこには要約すると「そろそろ君たちの村行くから準備よろしく〜」が綴られており村中に電撃が走ったのだった。


1番困ったのは村長だった。

つまりフォイアスの父親だ。

彼はこんなこと予見していなかった。いやできるはずがない。

しかし気まぐれで決められたとしても相手は王族だ。

文句など言ったものなら即刻打首、もしくは島流しとかだろう。


村中を大急ぎで飾り付け、道の舗装や大判銀貨10枚は下らないという上質な酒も用意した。


その間学校はもちろんあった。

特別クラスも一応あったが皆王子に気を取られて集中出来ていないようだった。


そんな嵐のような数日間が過ぎ今日がやって来たのだ。


ちょうど正午頃。

村の石門から1つの豪華そうな馬車がやって来る。

全ての人が膝をつき背筋を伸ばし祈るように手を握っていた。


これがこの国、異世界での礼儀作法なのだ。


しかし、王子が乗っているというのに馬車一つだけとはどういうことだ?

村を出れば平気で人攫いや魔物、魔獣が出てくると聞くが大丈夫だったのだろうか。


きっと馬車には王国の中でも指折りの少数精鋭が集められているのだ……多分。


そんな王子様一行を一目でも見ようとアルト村だけではなく近隣の村や街から人が集まっていた。


バーゲンセールのように取り合いが起きる訳ではなく全員膝を地面につき祈るように手を握っていた。


俺もその中のモブBとしてごった返す人と人の間を覗き見していた。


しかし王子様を乗せた馬車は俺たちの見えてなかったかのようにスルーして『学校』の方へ向かってしまった。


そう『学校』へ向かったのだ。

民衆の多くは学校付近に滞留しているが我らフリーゲン家は自宅に帰り昼食の準備を始めていた。


マリアードは

「私たちに利害がないのなら王様が居ても居なくてもどうでもいいわ。」

まさに怖いもの知らずって感じだ。


ペヤードは

「腹が減ったから飯にしよう」などと間の抜けたことを言っていた。



〜〜〜〜〜〜昼食後


外の様子が気になったので椅子に上り窓から外を見てみるとそこには人の姿はほとんどなかった。


王様が撤収命令でも出したのか

王様がほかの所に移ったのか……。


結局のことを言うとその両方だったのだが

これで終わりではなかった。

というかここからが本番である。


外の様子にも飽きペヤード達と一家団欒していたその時、「ヒヒーン」と馬の鳴き声が聞こえた。

この時点で嫌な予感がしていた。

その予感は外れることなく的中してしまったのだ。


ペヤードが恐る恐る扉を開くと


金や銀で装飾された豪華な馬車から

男が1人とこれまた豪華そうな鎧を着た兵2人が出てくる。


男はペヤードの前に立つと名乗り始めた

「我はジークフリート・アレス・ローリア。この国の第二王子である。」


ここから冒頭に見たであろう場面に繋がる。


俺、ペヤードとマリアードは膝をつき(以下省略)


王子は続けて言った。

「ここはペヤード・フリーゲン殿の家宅で間違いないか?」


俺は驚いていた。

王子が来たことにではなく、その風貌が先日見たイザークに酷似していたからだ。

第二王子は悪魔の血が流れているのだろう。


きっとペヤードも驚いているはずだ。


そう思いペヤードを横目で見ると

見たことの無いくらい真剣な顔をしていた。

王子の容姿を見ても驚いていない。


「私がペヤード・フリーゲンでございます。

一国の王子ともあろうお人が私のような下賎な者に何の御用でしょうか?」


「下賎などと自分を卑下するな。今回のことも貴殿の功績を加味しての事だ。では単刀直入に申す。」


家中に不穏な空気が流れる。

このピリピリとした緊張感、リシア校長と同じものを感じる……。


「貴殿を第一騎士団に推薦するそれだけだ。あくまで推薦、たとえ拒否しても罰することは無い。保証する。」


どうするんだ?

相手は一国王子だぞペヤード……。

それに第一騎士団は王族直属のエリート集団

その実力は全員八席と同等かそれ以上とも言われている。


いや決まってるよなあ。

第一騎士団は今よりも給料いいだろうし

それに子としても鼻が高い。




ペヤードは初めから答えが決まっていたのか

すぐさま返答する。


「王子様申し訳ありませんが、今回の件は断らせていただきます。」


な、なんだとぉ〜?!


返答を聞いた王子の顔がしかめる。

またもや緊張した空気が漂い始めた。


マリアードは狐につままれたような顔をしてペヤードの方を向いている。


重々しい空気感の中、先に口を開いたのは王子だった。


「そうか……。」


見るからにしょんぼりしている。

多分だけどこの人そんなに悪い人じゃない。


「君は入ってくれると思ったんだが……。いや良いのだ。無理強いはしない約束だったからな私達はこれで帰るとするよ。」


さっきまでの緊張感と王子としての威厳は消え去り場が少し和やかになった気がする。


「君はペヤード・フリーゲンの息子だね?少しこちらに寄ってくれ。」


まさか話しかけるとは思いもせず心臓が締め付けられる。


マリアードがなにか言いたげな顔をしている。


そろりそろりと王子の元へ近づく、今まで習った礼儀作法を駆使して粗相のないようにしたつもりだ。


心臓の音が鳴り止まない。

なにをされるのだろうか。


彼は一国の王子だ。

見た目は悪魔の青年という感じだが

彼の一言で俺の首が跳ねられてもおかしくない。


そうなればペヤードとマリアードが全力で反抗するだろうが。


王子は俺に顔を近づける。


なんだ小児愛者か?

イケメンにキスされるくらいなら我慢できるが

それ以上先は……。


「なんだ君は?視えない?」


なんだとはなんなんだ?

打首は嫌だ!

島流しとかも嫌だ!


「…………ゴクッ。」


唾を飲み込む。

緊張のあまり歯がガタガタと震える。


「君、名をなんという?」


呂律が回らないながらも必死に答えた。

「ペペ、ペルセウス、ふフ、フリーゲンですヴ。」


ふふっと微笑すると優しそうに目を細めて言った。

「そんなに緊張しなくていい。ペペルセウス・フフリーゲン君?君も魔法や剣術は使えるのかな?」


「ペルセウス・フリーゲンです……。魔法はだいたい中級まで使えて剣術も同じような感じです……。」


「その歳にしては大したものだ。君が大人になったら第一騎士団に推薦してもいいどうだい?」


「か、考えておきます。」


「まあ未来のことなんて分からないよな。では今度こそ帰るよ。ありがとう。」


こうして王子は帰って行ったとさめでたしめでたし。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜後日


教室では王子の話題で持ち切りだった。


「家に王子が来たんだ。」

そう言ったのは俺ではないフォイアスだ。

どうやら俺たちの家に来る前に村長宅へ向かったようだった。


「そ、それでどうだったの?」

ミカが興味津々そうに聞いている。

後ろからエルフ特有の尖った耳が見える。


「第一騎士団に推薦したい?って言われたよ。」


「受けたんでしょ?」


「いや断ってきた。」


どうしてどうしてと質問攻めするミカをなだめているうちに授業の時間が来たようだ。


てかお前も推薦されたのかよ……。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜19話王子様来訪終わり




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜後書なるもの


2日連続投稿です!

褒めて〜。

昨日いっぱいいいね貰えたので嬉しくて頑張りました。でもフォロワー?っていうですかねブックマークみたいなやつ、1人減ってて悲しかったです。



今のところ出てきた人物の中で強さランキング作りました。


堂々の1位 ジークフリート・アレス・ローリア


2位 リシア・バークハウゼン

3位 ペヤード・フリーゲン

4位 フォイアス・アルト・ガントレット

5位 トルシア・ドリカム

同率 6位 ペルセウス・フリーゲン

ミカ・サードルフ・モレナ

こんな感じです。

特に上二人は12、3章頃予定の物語終盤でも通用するくらいめっちゃくそに強いです。


追記

幼少期編これで終わるかもしれないです

追記の追記

幼少期編終わります

決して作者が幼少期に飽きたとかではなく

冒険者編を早くしたかったためです。

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