19話 王子様来訪 前編
季節は秋。
相も変わらず毎日、勉学と鍛錬に励む日々。
半年間の成果としては……何も無い。
いや、あるにはあるのだが今までが順調だっただけに達成感が少なかった。
この半年間で大和剣術初級しか習得していない。
大和剣術は攻撃に特化した剣術であり護りを重視している王流剣術とは相対する剣術だ。
以前も話したかもしれないがおそらく大和流剣術、発祥の地であるヤマト大国は日本からの転生者や転移者が建国したのだと思う。
前に聞いた偉人の魂の話もあるしおかしくない話だろう。
この世界でも漫画の話とかアニメの話とかしたいな……。
日本人が建国したなら漫画ももしかしたらあるかもしれない。
期待しておこう。
この世界には大きく分けて三つの剣の流派がある。
1つ目が王流剣術。
各国の騎士、国軍などが用いる剣術の総称。
2つ目がさっき話した大和流剣術。
ヤマト大国発祥の『武』を意識した剣術らしい。
3つ目が魔流剣術。
魔族、悪魔が多く用いていた枠に囚われない剣術。
魔族差別により使用者は少ないが応用力はピカイチだと思う。
正直この世界の剣術は魔法と遜色ないレベルで協力だ。近接なら剣術。遠距離なら魔法が有効と授業で習った。
どちら一方が強いとかではなくどちらも強い。
1つを鍛えるのではなく2つを中途半端でもいいから使えた方が強いとまで言われている。
リシア校長とか見てたら1つを極めた方が強いと錯覚してしまうが、「あの人は例外です。」と先生に論外扱いされてしまった。
伝説級の魔法使いは世界を見ても数人しかいないことを最近知った。
しかもそのほとんどがエルフや魔族などの長命な種族で純人間なのはリシア校長だけだ。
恐らくペヤード10人が束になって掛かっても敵わないだろう。
つまり最恐校長先生なのだ。
それに魔法だけではなく魔術もスゴいらしいと学校中で噂されていた。
確か『夢幻想』《ドリーム》だっけか。
名前では見当つかないな……。
夢と幻想だから精神攻撃とかしてきそうだ。
前世の虐められていた記憶とか出されたら1発KOされる自信しかない。
魔法を使うための魔力は基本体の成長と共に増えていくのだが俺はどれだけ成長しても魔力量は微量しか変化しない。
これは魂が混合しているからなのか
神様が何やらよからぬ事をしているのか
俺に才能が無さすぎるのか……
最後のじゃないと願いたい。
2年生にして学園トップのF君は
「魔力がありすぎても使い所に困るだけだよ〜」
とかふざけたことを申していた……。
フォイ○ス君は最近全く魔力が尽きないらしく上級魔法数十発発打っても澄ました笑顔をこちらに向けていた。
さらにフォ○アス君は最近、女子に絡まれるのが嫌なようだ。対処方法を俺に聞いてくる。
前世で女子にカウパーマンとかバイドクマンとか呼ばれていた『俺』がだ。
容疑者『P』(ペルセウス)君はその純粋無垢な質問に対して「女の子なんて少し雑に扱う方が依存されやすいんだぜ。」
などと、あたかも「女慣れしてますよ俺」的なことをドヤ顔で語っていた。
家でふと我に返り
顔を赤く染めたのは言うまでもない。
それが今日の出来事だ。
明日学校で会う時なんて話したらいいんだ……。
あんなこと言うんじゃなかった!
などともう何回思ったことか。
そんことを繰り返して今に至る訳だ。
特にすることもないので窓から外を眺めていた。
外は薄暗くそろそろ完全に日が沈みそうだ。
この世界の夜はそんなに暗くない。
街灯はあまりないが少し魔法を齧っている者なら光源を生み出すことなど容易い。
生活水準は前世の中世よりもだいぶ上だろう。
逆に魔法に頼りすぎて文明が進んでいない気もするのだが今のところ困ることはトイレットペーパーがないことくらいだ。
少し見ないうちに外は暗くなっていた。
もう秋なので日が沈むのも早くなってきたな。
この前までこの時間帯は明るかったのにな。
季節と人は変化するのが早いこと早いこと。
「あれ?」
家の付近に光が近づいているのに気がついた。
仕事終わりのペヤードだろう。
俺はリビングへ降りペヤードを出迎える準備をした。
「ガチャ」
扉の奥から出てきた『2人』は酒臭かった。
1人はペヤードだが
もう1人は……?
もう1人を見て体がこわばっていくのがわかる。
その体は全体的に薄暗く
髪は還暦を過ぎた老人みたく真っ白だ。
顔を見るにペヤードと歳は変わらないくらいだろうか。
この人はもしかして教科書にも絵本にも出てくる悪魔?
「イザーク久しぶりね。」
椅子でくつろいでいたマリアードは眉ひとつ動かさず答える。
マリアードの知り合いみたいだ。
良かった。
俺たちを取って食うワケじゃないみたいだ。
「いや〜久しぶり。ペルセウス君ははじめましてかな。話は聞いてるよ。」
「はじめましてペルセウス・フリーゲンです。」
その飄々とした態度に驚いたが直ぐに返事を返す。
イザークは肩を貸していたペヤードを椅子に座らせ自分も席についた。
きっとペヤードが起きる様子がなさそうなので放置したのだ。
なんか手馴れてるしこの家に来たのも初めてじゃないのだろう。
「俺はイザーク・ヴィンセント。ペヤードと同じ国軍に務めていて階級は三尉騎兵と言っても子供にはまだ分からないかな。」
確か五尉、四尉と上がっていくから下から数えて3番目か。
「あなたまだ三尉騎兵なの?」
種族のことを質問しようと思ったら
先にマリアードに答えられてしまった。
「国から圧力をかけられてるみたいだ。まあわかりきったことだったけどね。」
「まだ種族差別をしてる連中がいるなんて……一体何を考えているのかしら。」
マリアードは鬱憤を発散するようにアーモンドみたいな木の実をガリガリ食べ始めた。
「隊の仲間達はペヤード含め良い奴ばかりなんだけどね〜」
イザークの目が少し揺らめく。
その目がこちらを向きイザークは話を振ってきた。
「君は俺を見ても恐れないんだね。」
「初め見た時は少し怖かったけど今は怖くありません!」
「俺は悪魔なんだよ?よく絵本で出てくるだろう?主に悪役で……。」た
「悪役だから怖がるなんてこと僕はしないですよ。」
イザークはやっぱり悪魔だったのか。
魔神王側の種族だから今も忌み嫌われ
エーリュシオンに追いやられているみたいな感じだったか……?
悪魔だから昇給できないとはなんとも不憫だ……。
そんなことを考えイザークの方を見つめていたらその事を不思議に思ったのか
イザークは目を見開きマリアードに問いかける。
「この歳くらいの子供は普通悪魔を怖がるんじゃないのか?!」
マリアードは木の実をかじり終わると
少し目を閉じ
「私たちが種族差別なんて阿呆のすることを子供に教えるわけがないでしょ。そんなことをするくらいなら死んだ方がマシだわ。それよりもお腹すいてない?余り物だけど味は悪くないと思うから食べてくれると助かるのだけれど……」
なんだろう
マリアードさんの口調がいつもより悪い気がする。
俺のお母さんこんなに怖かったかな?
イザークは机に置かれた夕飯の残り(ペヤードの分だが当の本人が寝ているため残飯行きの予定)を丁寧に食べ始める。
その見た目と言動からは想像がつかない食べ方だ。
ペヤードもテーブルマナーには厳しかったし国軍にはマナー講義でもやってるのだろうか。
頭の中にマナーにうるさいおばさんが出てきたのは俺だけではないはずだ。
余り物を食べながら
イザークが些細なことを思い出したように呟く。
「あっ、数日後にこの街、村に王子様が来訪するらしいから。そこんとこ宜しく。」
俺とマリアードは今日一でかい声で叫んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜数日後
「我はジークフリート・アレス・ローリア。この国の第二王子だ。」
本当に王子様来ちゃった……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜後書なるもの
19話やっと書き終わりやした。
おくれてごめんなさい。
イザーク出て来たあとの会話に1週間くらいなん書こうか迷ってました。
出してない2週間くらいで天○突破グレンラガンとシュタゲ(5週目)見終わりました。
え?それが遅れた原因だって?
何をおっしゃるのですか読者様方そんな訳ないじゃないですか〜。
次回!
19話後編お楽しみに!
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